法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Go!プリンセスプリキュア』第36話 波立つ心・・・!みなみの守りたいもの!

海藤家のパーティーに誘われた春野たち。海藤家の豪華客船に友人を迎えた海藤は、ひとりの女性と港で出会った。
その女性は海棲生物が専門の獣医、北風あすか。水族館に春野たちを案内した北風は、家をつぐのとは別の未来もあることを海藤へ示唆する。


物語のほとんどが海藤視点で、北風とのやりとりを主軸に物語が進んでいく。爲我井克美作画監督らしく頭身の高い絵柄が、ちょっと大人のドラマにふさわしい。
周囲のプリキュアより年上の海藤は、過去にも何度か未来の進む先を考えて、家をつぐ以外の道を考えるようになってきている。その心の動きを、方角が対となる名前のキャラクターで駄目押しした。キュアマーメイドというモチーフを連想させつつ、地に足のついたロールモデルだ。陽光をあびて仕事をしている人物らしく、褐色の肌にそばかすが映えるキャラクターデザイン。
服装規定を満たしていなさそうな作業着でパーティー会場にあらわれたかと思えば、海藤両親が招待していた学者だという展開もおもしろい。海洋学者として博士号をもっている若い女性は、ロールモデルになりうるくらい現実的で現代的な魅力がある。そして残念ながら今なお意外性がある。
もちろん北風の夢が怪物化させられてプリキュアと戦うわけだが、ひさびさの水中戦をしっかり作画で動かしていて、アクション面でも充分に楽しめた。


そして北風と生物をめぐる描写は、同じ成田良美脚本の第16話に対するアンサーのようであった。
『Go!プリンセスプリキュア』第16話 海への誓い!みなみの大切な宝物! - 法華狼の日記

主人公を動物が助ける展開からして古臭い。野生動物との距離の近さと、人間側の身勝手な思いいれに危うさを感じた。良くも悪くも成田良美脚本らしい。

野生のイルカが海藤になれていることを珍しいと評したり、魚をペンギンの餌にすることを人間は命をもらって生きていると語ったり。これはこれで類型ではあるが、それゆえひとつの考えとして不自然ではない。第16話とあわせて、きちんと思想のふれはばが描かれている。
台詞のひとつひとつも、類型のなかでは押しつけがましくない。今回は未来が定まらない物語でもあるし、考えを固定しない慎重な言葉づかいが多かった。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#2 バルバトス

武装組織ギャラルホルンの猛攻にさらされる基地。少年兵をまとめるオルガ・イツカは、動力源にしていたモビルスーツをつかって反撃することを決意する。
操縦と戦闘ができるようにモビルスーツを急いで整備し、三日月・オーガスギャラルホルンモビルスーツに対峙していくが……


今回はロボットアニメとして順当によくできていた。やはり細部に注文をつけたいところはあるが、第1話で設定説明をすませたおかげか語り口に余裕がある*1。死にぎわの台詞や操縦時の鼻血など、戦場描写は類型的だが、無理なくまとまっている。
まず、第1話の終盤から少し時間をさかのぼり、ガンダム・バルバトスを兵器として稼働するよう奮闘するところから描かれる。せまりくる危機から突如とした反撃を演出した前回と対照的に、どのように反撃していったかをじっくり見せた。同じ出来事で異なる魅力を描く、オーソドックスで効果的な手法だ。
肩部装甲がないことで細身の体型を強調したり、モビルワーカーを組みこむことで操縦できる説得力を増したり、急いで転用した兵器だからこその描写も多い。手持ちの武器がほとんどないからこそ、姑息な作戦で勝率を高めようとする奮闘も映える。
ただ、いそいで整備していたから推進剤を忘れていたという台詞は、アクションの高揚感へコメディチックな言動で水をさしてしまったし、無意味に整備士を無能に見せていていると感じた。そこは単純に充分な推進剤を用意する時間がなかったという説明で充分だろう。


戦闘が終わってからは、民間警備会社の上司が少年兵へ理不尽な暴行をくわえたり、クーデリア・藍那・バーンスタインの少年兵への同情が当人から拒絶されたり。後者だけなら理想を切りすてるだけのつまらない描写だが、前者があることで理想にもつ意味もあるという展開になるだろうか。
おもしろいのが、クーデリアが自分がねらわれた理由を正確に推理できていること。火星独立運動の象徴になれるくらいには頭がまわる証明になっているし*2、それなのに推理が的外れであるかのようにオーガスはクーデリアの責任感を批判する。オーガスが正しいかのように演出されているが、もし正しいとしてもそれは“現実”を知っているからではないわけだ。
また、ギャラルホルンが撤退したのも、敵が少年兵と知ったことが理由のひとつ。今回だけで子供を戦争に動員することの異常性が三重に強調されている。しかし、そう動いた隊長のクランク・ゼントは、結末でひとりで戦うことを決めた。中途半端な理想という意味ではクーデリアよりずっとひどいわけだが、さて次回にどのような結論がくだされるか。


映像面では、とにかくバルバトスのアクションに説得力があった。隠れるところが何もなさそうな戦場でも、うまく距離をはかって戦い、土煙や敵兵器を活用する。地面をすべるような殺陣は、ガンダムではなかなか見ない。
キャラクター作画でも、暗がりで影の無い作画が目を引いた。赤井方尚キャラクター作画監督は、どうやらスタジオへらくれすの人脈らしいが、安定して良い仕事をする。

*1:『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#1 鉄と血と - 法華狼の日記で感想を書いたように、第1話単体では説明を入れすぎと考えていた。第2話まで見ても、やはり第1話の前半は短縮できたと思うが。

*2:それにしては、少年兵の状況を見て衝撃を受けることが不自然だが。独立運動関係で、よほど耳ざわりのいい情報だけ周囲に吹き込まれていたというくらいの背景はほしい。