法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「han.orgのサーバーが韓国領事館にある件について」というデマについて

金明秀教授のサイトが、韓国領事館内にあるサーバーを用いているという話が、Twitterを中心として*1まことしやかに流されている。
http://tonchamon.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/hanorg-915f.html

これが気になって見てみたらマジだった。
http://www.aguse.jp/http://www.han.org/a/vita.html を入れれば見れるとww 
地図をズームすると韓国領事館ww http://p.twipple.jp/AByMS

han.orgってのは金明秀が主催するハンボードという掲示板があった所。
こういうのがわかると民団と総連を分けて考えてはいけないと思う。

どこをどうすれば民団と総連の密接な関連を示す根拠となるのかが、よくわからない。
もちろんコメント欄でも、すでに下記のようなコメントで誤解が指摘されている。

それ「han.org」に限らず、「SAKURA Internet/.sakura.ne.jp」でサーバをレンタルしているサイトの一部で、位置情報が地図上の大阪韓国総領事館で表示されるようですね。福岡の大手ブライダル貸し衣装の「(株)山田屋」さんの携帯サイト?も同じ表示になります。/http://www.bridal-yamadaya.jp


投稿: leny | 2013年4月26日 (金) 15時13分

要するに、「aguse.」で表示される地図情報は不正確なものであり、拡大してもサーバーの正確な場所がわかるわけではないということ。
ちなみに、この誤情報を流しているブログは「nifty」サービスを使っているのだが、同じように「http://tonchamon.cocolog-nifty.com」を「aguse.」で調べると、住所は東京都新宿区北新宿なのに、地図上では皇居内にサーバーがあることになっている。

『トーキョー・プリズン』柳広司著

敗戦直後の日本。東京裁判が始まったばかりのある日、巣鴨プリズンで謎の毒殺事件が発生する。謎を解く探偵役は、戦時中の記憶を喪失しているBC級戦犯容疑者。ワトソン役をつとめるのは、戦時中に行方不明となった兵士を探しにニュージーランドから来た私立探偵。
さまざまな古典や偉人を題材にしてきた著者が、はじめてオリジナルの登場人物ばかりで構成した本格ミステリ。ただ、歴史小説一般が歴史の二次創作に近いと思えば、過去作品の延長線上にあるといえるか。探偵やワトソン役も、さまざまな古典ミステリを思わせる人物像をしている。


謎解きの主な焦点は、きびしく管理された監獄内での密室毒殺事件と、探偵役の捕虜虐待疑惑。そこに焼け跡を調査してまわる私立探偵が戦争に直面していく物語がからんでいく。頁数は多いが文章は平易で、描写も詳細にすぎず、読みやすい。
本格ミステリとしては頁数に比べて登場人物が少ないし、事件の謎も主として毒物移動だけなので真相の見当はつけやすい。しかし、どんでん返しとシンプルな毒殺トリックがきまっていて、満足度はそれなりにあった。


何より良かったのが、戦争責任のあつかいだ。軍部の暴走だけで片付けようとする態度を批判しつつも、報道の偏向だけに責任を押しつけることもない。当時の国民も真実から目をそらす報道を望んだと自戒しつつ、全国民に責任を分担して薄めることも避けている。自分以外に責任があったと主張するような自己弁護を批判し、責任が消失していく社会制度を批判する。
自身も被害者なのだと自己欺瞞するために天皇を軍部の被害者とみなし、共犯的に責任を問われないですませた日本国民の問題を、ニュージーランド人の視点から描き出した。この理路で天皇の戦争責任を問う過程は、登場人物の視点において明解だ。
もちろん、連合軍にも原爆投下や敗戦後日本でのふるまいをつきつけ、その正義を問う。しかし東京裁判を勝者の裁きとして単純に拒否することも慎重に避けている。日本が身勝手に戦争をはじめたことを率直に記述しているし、アメリカ人弁護士が裁判の拙速さに怒る場面もある。相対化する表現はあったが、戦争責任を相殺することはなかった。


そして捕虜収容所の所長をつとめていた名探偵にかけられた虐待容疑。懸念したとおり、文化の違いによる誤解という推理が行われた。
……だが、それは中盤の段階にすぎない。名探偵が捕虜を刺殺したという作品独自の噂、そして名探偵らしい能力を持ちながら多くの捕虜から名指しされた謎が残る。ゴボウや鍼灸が虐待と誤解されたという都市伝説*1は有名だから、それだけが真相ではミステリにならないわけだ。そして最終的に、きちんと現在の歴史研究水準にあわせた真相が開示され、確かに日本軍には根深い問題があったのだと示してみせた。
推理という過程をふむことで納得しがたいことを読者に納得させる、本格ミステリという表現。その特性が、歴史認識問題と結びつくことで効果をあげた好例だと思う。

文脈非依存で判断と主張しながら、文脈に基づいて判断する謎

フィフィ氏の子供を持ち出して金明秀教授が脅迫したという風説は、すでに[twitter:@Fumiaki_Taka]氏が反論している。
金明秀先生がフィフィさんの子どもを持ちだして脅したという嘘 | Accipiter
上記エントリで指摘されているように、金教授は特定の学校ではなく外国人学校一覧を示しただけであったし、フィフィ氏自身も子供の話を自説の補強として持ち出していた。


しかし、文脈を抜きにすることで金教授が誤ったという意見がある。金教授とツイートをかわして、下記Togetterを自らまとめた[twitter:@Kelangdbn]氏の主張だ。
「フィフィ vs. 金明秀」騒動をレビューする ~ 「あなたのお子さんが…」発言を巡って - Togetter

「文脈非依存にアウト」と当初に主張しながら、途中から「一般に対立する2者があって」という文脈を採用していることに無自覚らしい。子供の話を問いかけたツイートに対して、「ぎょっとする」と判断できるのは、両者が対立しているという文脈を知りつつ、親側が先に子供の情報を出したという文脈から目を閉じる時にのみ成立する。
Kelangdbn氏は当初の主張を続けたいならば、たとえば弁護士が依頼人へ説明する場面や、教師が学生に尋ねる場面も、アウトと主張できなければならない。


しかもKelangdbn氏はTogetter冒頭の説明文で、「参考サイト」として「ニュースの社会科学的な裏側」をあげている*1

朝鮮学校に限らず外国人学校が就学支援金を受けていることは客観事実( http://p.tl/jgZA )であり、
@han_org教授の主張内容自体は妥当だがその方法に問題はなかったか?


参考サイト: 「ニュースの社会科学的な裏側」
http://www.anlyznews.com/2013/04/by.html
http://www.anlyznews.com/2013/04/vs.html

まず下に張られている4月23日のエントリは、フィフィ氏のツイートだけに基づいて判断しているためか、金教授の主張を誤読している。

「外国人が生活保護を受けること自体が不自然」などを主張しているエジプト人タレントのフィフィ氏に対して、関西学院大学の金明秀教授が「サイッテーやな、フィフィ。以後は手加減しないよ」「そろそろ自分が口にした愚かしい発言に対しては自分が尻拭いをしなければならないという基本原理を覚えてはどうかな」と抗議(?)している。日本には言論の自由はあるので、是非はともかくフィフィ氏の主張は許容範囲なのだが、金明秀氏の言い方は言論の範疇なのであろうか?

フィフィ氏が誤ったツイートを何度も投下しては削除をくりかえし、その削除が圧力によるものとにおわせていたことに対して金教授は「サイッテー」と評価したのだし、その時のやりとりを年をまたいで圧力の証拠であるかのように持ち出したから「自分が尻拭い」するようにと批判したのだ*2
4月25日のエントリも同じ誤りに基づいている上、フィフィ氏が自身の子供を主張で持ち出していたことに言及せず、下記のようにさらなる誤りをおかしている。

フィフィ氏が就学支援金の支給で、子どもを通じて個人的な利益を得ているか否かは議論に関係ない。学校に支給されるから、保護者にとっては認識も薄く、混乱を招く。

つまるところKelangdbn氏は、フィフィ氏の主張した文脈に依存したエントリの文脈に依存して主張しているにすぎない。

*1:Fumiaki_Taka氏のエントリを指摘するツイート等もTogetterにまとめているが、参考サイトに加えるどころか、直接の返答すらしていない。https://twitter.com/neko_yamashita/status/327590114635182081

*2:http://matome.naver.jp/odai/2136676914522300501で経緯がまとめられている。