かなり力技を必要とするものの、自己犠牲を必然とせず地球を救える道が示された。これならば文句なく大団円へ行けるかもしれない。
それはそれとして、そのような大作戦が提案されているとは知らないところで、ダンと魔ゐが初めてカードバトルを行う。
世界の敵あつかいされたダンに生きがいを取り戻してもらおうと未来へ呼んだ第1話。その結果としてダンは自己犠牲を求められる立場になった。未来で発見された遺物から、ダンが未来に行った日から行方不明あつかいされたことも知った。
その悔恨から魔ゐはダンを倒し、自己犠牲を求められる英雄から一人の少年へとひきずりおろそうとする。
明言していないが、以前に重要アイテムを奪ったのも、ダンにカードバトルをしてもらえる機会を作るためだったらしい。その回の感想で『機動戦士Vガンダム』のカテジナを思い出すと書いたが*1、私情を隠して大局的に動いているかのようふるまうキャラクターという意味では大正解だった。違うのは、最終的に自分の動機が私情であることを自認して告白もできたこと。それができたから、正面から相手をしてもらうこともできたし、ダンを真似して周囲を助ける努力も行えたわけだ。
そうして愛の告白までして引きとめようとする魔ゐに対し、迷いなく正面から撃破してしまうダンも半端ない。前回同様に漆黒の姿へと変化し、背後に最大の敵であった異界王の幻影まで浮かぶ。しかし邪悪というよりは、個人と英雄との選択に、安易に善悪という評価を持ち込まない誠実さと感じられた。きちんとダンは思いを受け止めているため、正面から願いを否定しながらも主人公らしい清々しさが確かにあった。
最終的に第1話でダンと魔ゐが未来へ行った構図を、立ち位置を変えて再演。鬱屈していたダンが魔ゐに救われたように、魔ゐもダンに救われたと示す。EDのラストカットで示され続けた少年少女の物語は、ここで完結した。
それにしても、第1話を見た当時でさえ主人公がすさみすぎていて驚いたのに、回想と本編を見比べるとダンも魔ゐも明らかに悪化していた……いやまあ、民族差別や植民地の圧政が続く未来世界で、安易に子供らしさを取り戻すよりは、ずっと良いと思うが。今回の展開で重荷をひとつ支えあうことができるようになったし。