喫茶店の看板娘、咲良うた。常連客の少女漫画家を歌で応援したりする彼女は、川を流れていた巨大な桃のようなものをひろう。桃のなかからあらわれた妖精プリリンとともにプリキュアをさがすと、ベンチで隣に座った力士がプリキュアだという……
アイドルを中心的なモチーフにした初のプリキュア。第1話は今千秋シリーズディレクターによる演出、加藤陽一シリーズ構成による脚本、上田由希子の単独作画監督という布陣。
これまでシリーズ複数作品に参加してきたシリーズディレクターだが、思えば監督したアイドルアニメは下ネタ極道ギャグの『Back Street Girls -ゴクドルズ-』だった。しかしこのような作品にしあげてくるとは予想できなかった……
キャラクターデザインの杉本海帆はアンサースタジオ出身で、サンライズや東映作品に参加してきたらしいが、過去仕事を見返しても印象に残っていない。「アニメミライ2012」の『ぷかぷかジュジュ』でキャラクターデザイン経験はあるようだが。
とにかく予告の段階で『きらりん☆レボリューション』のような約20年前でも古臭く感じたようなキャラクターデザインに疑問を感じていたが、それ以上に古めかしさのある本編にビックリした。
ひさびさに第1話から敵幹部が登場するが、女リーダーが男コンビをひきいる『タイムボカン』的な設定は『プリキュア』では初めて。本家も同じ加藤シリーズ構成の最新リメイク『タイムボカン 逆襲の三悪人』が終わってから5年以上になる。
しかしこの一周まわった古臭さが逆に楽しい。喫茶店内で主人公が漫画家の女性を応援する冒頭にはじまり、ちょっと古臭くも優しい世界観だからこそ、『プリキュア』的な異変が始まるギャップがきわだつ。
そして桃が流れてくる絵面までは子供向けアニメだから昔話を引用したのだろうと思えたが、妖精がホットドックをすべて食べてしまったり、力士がプリキュアということになって桃に入ってそのまま番組が最終回をむかえたり、どんどんシュールな絵面を展開していく。主人公のツッコミや変顔も多用され、古臭くてもテンポ良く濃密につめこむことで現代に通じるギャグアニメとして完成されていた。
アクションもシリーズの通例に近い徒手空拳バトルのようで、必殺技のライブが事実上の拘束技になっていることに笑う。
今のところモチーフのアイドルがプリキュア時のドラマとテーマ的にからんでいなかったり、ギャグアニメにしても展開がとっちらかっている気はしたが、とにかく楽しい第1話ではあった。