法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』まさかこんなことになるなんて ○○しただけなのにSP

 珍しくショート映像集がアバンタイトルにしかない。


国境警備隊 キューバ編」は、米国の密輸中継地にされがちなキューバにおける税関職員の活躍を紹介。
 社会主義体制でありつつ観光客も多くて相対的に開かれている小国なためか、これまで番組が紹介してきた税関とは雰囲気が異なる。全体的に真面目で、高圧的ではなく温和的。
 もちろんカメラの前のふるまいであることは加味すべきだろうが、他国もカメラの前でふるまっていたことを考えれば、どのように自分たちを位置づけたいのかという職員の自意識の違いが感じられる。


「奇跡の生還」は、カナダ近くの米西海岸にあるサン・フアン諸島でシーカヤックを楽しもうとした男二人組の遭難を紹介。
 冬の近い11月末、4時間も遅刻した友人ラリーとともにロザリオ海峡にこぎだしたソール。しかし暗い中でオールをこぐラリーがソールには初心者に見えてしまう。
 はげしく荒れる冬の海で、どちらか一方が島に近づいて上陸できそうな場所をさがすことになり、ソールが島に近づくことに。しかし島に近づくほど波がはげしくなり、ソールは岩に乗りあげてしまった。あわてて懐中電灯をふってラリーに近づくなと警告したが、上陸地を教える懐中電灯を点滅させる合図と思ったラリーは近づいてきてしまい、カヤック同士が衝突。ふたりは荒海から島へ上陸するしかなくなった。
 持ってきたテントで夜明けを待ち、ふたりは島を脱出して帰ることに。しかしソールが安全で遅いルートと危険で早いルートを提示したところ、ラリーは後者を選択。来た海峡をもどるルートを進むことになった。白昼で見るラリーのオールさばきはどう見ても素人。さらに荒れた海で進めなくなり、ソールは先に進んで救助を呼ぶことを選択。ラリーに裏切り者と罵倒されながらソールは陸地にたどりついて救助隊を呼んだ。
 そして救助隊が出動したが、ラリーのカヤックが発見されたかと思えば二人乗りの別人のもの。ソールはラリーの家族へ喜びの電話をかけたかと思えば残念な知らせに変更したりする。とはいえラリーは海に投げ出されながらも小さな灯台にたどりついていて、かろうじて生存。今でもふたりはシーカヤックに出かけつつ当時のことにはふれないという。
 スタジオでもツッコミが入っていたが、一方が自信満々が素人で当然のように事故が起きたという展開で同情しづらい。ちょっと共感しづらい方向で愚かすぎてドラマにもならない……


「手紙を書いただけなのに」は、冷戦のさなかの1982年、秘密警察から書記長になったユーリ・アンドロポフに対して、核戦争を案じる手紙を送ったサマンサ・スミスという十歳の米国人少女を紹介。
 1983年、サマンサはソ連に正式に招待され、米国メディアから取材される。そしてソ連でさまざまな場所をおとずれ、イベントにも参加して同世代のソ連人と交流する。ユーリは体調不良を理由にサマンサと会わなかったし*1、米国でもプロパガンダにつかわれただけという冷ややかな評価がされたが、サマンサはソ連で好意的にあつかわれたことも事実奈ようだ。
 大韓航空機撃墜事件でふたたび米ソの緊張感が増してサマンサはふさぎこんだが、やがて回復して世界各地を訪問する活動を始めて、ディズニーチャンネルで番組をもつまでになった。
 しかし1985年、番組収録後の帰路で飛行機が墜落。わずか13歳で生涯を終えた……
 あまり知らない人物だったが、スタジオで指摘されたように国家の思惑を考慮してもソ連人に愛された少女ではあったのだろうとは思えた。その名前で検索するとソ連崩壊後も愛されていたらしい逸話が出てくるし、その活動にしても雪融けアピールの支援というかたちで冷戦を緩和する助けになったはずだ。

*1:番組では詳細な説明がなかったが、このころユーリが体調を崩していたことは事実と考えられ、事実として半年後に死去している。