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上記エントリの本題は、6月末期限のワクチンについて世田谷区が一部の医療機関から相談を受けている段階であり、融通しやすくなれば解決に向かう時間はまだある。
より大きな問題として、国と自治体それぞれの接種情報が共有できない懸念がある。これは一医療機関にとどまらず、下手をすると全国の自治体を巻きこみかねない。
報道されている自衛隊システムの稚拙さや*1、共有されるという記録システムの入力不具合を思うと*2、小林史明氏の説明を信頼することも難しい。
ワクチン接種記録システムVRSでデジタルに記録は自治体へ共有されます。どのような説明が実際に行われたか確認しますが、紙で送られることはありません。 https://t.co/hX0oYNJfxY
— 小林史明(衆議院議員/広島7区/福山市) (@kb2474) 2021年5月15日
ワクチン接種記録システムVRSでデジタルに記録は自治体へ共有されます。どのような説明が実際に行われたか確認しますが、紙で送られることはありません。そもそも小林氏も「どのような説明が実際に行われたか確認します」とツイートしており、特別区長会において保坂氏の要約した説明がなかったとは断言していない。
保坂氏は東京23区の区長があつまる会において、そうした説明が国側からされたのだという。保坂氏自身も意外な話と受けとめている。
5月14日特別区長会の議論で、深刻に受け止めたのは、国会場で23区の区民が接種を済ませたという情報が、デジタルで区に届かず、紙で送られてくるという「まさか」の話。「宅配便で記録がまとめて送られてきても事務負担が増すだけでなく、リアルタイムの接種数は区には届かない」という事態だった。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2021年5月14日
5月14日特別区長会の議論で、深刻に受け止めたのは、国会場で23区の区民が接種を済ませたという情報が、デジタルで区に届かず、紙で送られてくるという「まさか」の話。「宅配便で記録がまとめて送られてきても事務負担が増すだけでなく、リアルタイムの接種数は区には届かない」という事態だった。
デジタル社会推進本部の事務総長である小林氏が引用リツイートで接種記録システムVRS*3の存在をつたえた後も、同日の国側の説明を前提にツイートしている。
5月14日の特別区長会で各区の区長から出た疑問は、国会場で接種を済ませた後で、地元の自治体にそのデータがリアルタイムで送られてくるのかどうかだった。今のところ、国の審議官は「接種記録」が紙で時間差で送られてくると説明はあったが、即時データ提供されるかどうかは「持ち帰り」となった。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2021年5月17日
5月14日の特別区長会で各区の区長から出た疑問は、国会場で接種を済ませた後で、地元の自治体にそのデータがリアルタイムで送られてくるのかどうかだった。今のところ、国の審議官は「接種記録」が紙で時間差で送られてくると説明はあったが、即時データ提供されるかどうかは「持ち帰り」となった。
一方、小林氏は大規模接種も自治体接種も同じシステムで管理するから、住民票のある自治体に情報共有されると第三者に回答していた。
VRSを使うので、今回の特設会場であっても別の自治体の場所で接種しても、各個人の接種記録は全て、住民票のある自治体にデータで共有されます。https://t.co/tcw2qCgpFU
— 小林史明(衆議院議員/広島7区/福山市) (@kb2474) 2021年5月18日
VRSを使うので、今回の特設会場であっても別の自治体の場所で接種しても、各個人の接種記録は全て、住民票のある自治体にデータで共有されます。
https://cio.go.jp/sites/default/
しかしよく読むと、「確認した結果をおしえてほしい」*4という疑問には答えていない。区長側へ国側がおこなった説明についてはわからないままだ。
ここまでは、保坂氏と小林氏ふたりの認識が対立しているだけだった。
しかし5月18日、特別区長会で会長をつとめる山崎孝明氏がおこなった記者会見で、保坂氏の認識を裏づけるくだりがあった。
どうする接種の二重予約 江東区長「教えてよ」と逆質問:朝日新聞デジタル
「(センターの)国の方で打ったと区にリアルタイムでデータが送られてくるならまだしも、送られてこない」と国のシステムに不満を示し、「(国が)『余ったものの利用は地方自治体の長に委ねる』とか言ってくれれば、そりゃうまいこと考えますよ。だけど、それすらない」と強調した。
この発言により、大規模接種センターの情報がリアルタイムで共有できないことは、保坂氏一個人の誤解などではないことは確定した。
もちろん保坂氏と山崎氏が状況を正確に認識できているとも断言はできない。可能性はいろいろ考えられる。
国側の説明を特別区長会が組織的に理解できない問題、国側の審議官がわかりやすい説明をできなかった問題、国側の審議官に接種記録システムの存在がつたわっていない問題、国側は共有システムの稼働を確約できないため明言できない問題、小林氏の理解か説明が誤っている問題……といったところか。
現時点の報道では、記録システムの入力不具合が多発して改修が難しく、いくつかの医療現場は手入力でしのいでいるという。単純な物量問題で、大規模接種はそうした手入力が多く必要になりかねない。そうなると、大規模接種センターで情報を入力するより紙書類を自治体へ送付するほうが早いと国側が考えそうな気がする。
もっといえば、そうした大量の手入力が必要になった時、国側は自治体に丸投げしたいのではないか、という深読みまでできる。その可能性を感じさせる保坂氏のツイートもある。
私たちは5月14日、国からの大規模接種会場についての説明を聞いた。予約開始は17日で、接種開始は24日。本来なら東京の大規模接種を始めるのなら、23区や三多摩の市町村の話を聞いて制度設計するのが当然ではないか。今回のワクチン接種の主体は区市町村だから、記録の手入力は自治体の仕事だという。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2021年5月15日
私たちは5月14日、国からの大規模接種会場についての説明を聞いた。予約開始は17日で、接種開始は24日。本来なら東京の大規模接種を始めるのなら、23区や三多摩の市町村の話を聞いて制度設計するのが当然ではないか。今回のワクチン接種の主体は区市町村だから、記録の手入力は自治体の仕事だという。
いずれにせよ、ここで国と自治体で情報を共有できない問題が発生していることはたしかだ*5。
たとえ区長側の能力不足だけで誤解が起きているだけだとしても、その問題があること自体は変わらない。
住民にとっての大きな問題になる前に解決してほしいものだが。
*4: 結局これ、どうなったのだろう。VRSを活用している自治体はいいけど、そうでない自治体は紙で送られるということ?
確認した結果をおしえてほしいものです。 https://t.co/MvmSpsobwP
*5:なお、区と国の二重予約をシステムでふせげないという保坂氏らの指摘はすでに国側も認めている。その後に国と自治体で違う種類のワクチンをつかうことになり、二度目の接種を違う場所で接種するだけで問題が起きるようになった。 また、区の会場のワクチンはファイザー社、国の会場はモデルナ社です。従って、区の接種と国の接種を合わせて受けることは出来ません。例えば、区で7月15日と8月5日で予約済の方が、国会場で6月中旬を予約しても2回目を区会場では打てません。接種期間も違います。くれぐれも御注意ください。