法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

まさか現実に『相棒-劇場版III-』のような事件が発生するとは思わなかった

2014年に公開された『相棒-劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』は、テレビ朝日系列のTVドラマ劇場版としてつくられた3作目*1で、元自衛隊民兵組織をつくって孤島で訓練をおこなっている設定だった。
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舞台となる民兵組織のカルトぶりも、絶妙なラインをついていた。教育組織としてふるまっているところは、戸塚ヨットスクールをはじめとした問題が現実にも残っているし、自衛隊そのものにも教育機関となるよう期待する政治家がいる。退官した人々の受け皿として民兵組織が成立しているところなど、わりと現実の自衛隊からも共感されそうだ。

しかし、この映画を見た時点では、あくまで風刺として成立するくらいのリアリティだと感じたし、むしろ自衛隊本体とは対立する構図に納得していた。

現実にも、田母神俊雄航空幕僚長のように、排外思想や陰謀論にそまった元自衛官がいる。その過激とも本音ともとれる発言は、せまい範囲の人気を取るため政治家に利用されることもあるが、自衛隊の立場を強くしたい人々には煙たがられている。自衛隊が国内外に危険視されては困るからだ。


現実には、特殊作戦群を創設した元自衛官をしたうように、現役自衛官まで訓練のためカルト的な組織に参加していたという。
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陸上自衛隊特殊部隊のトップだったOBが毎年、現役自衛官予備自衛官を募り、三重県で私的に戦闘訓練を指導していたことが23日、関係者の証言などで分かった。

参加者が迷彩の戦闘服を着用しOBが主宰する施設と付近の山中の間を移動していた。自衛隊で隊内からの秘密漏えいを監視する情報保全隊も事実を把握し、調査している。 自衛官が、外部から戦闘行動の訓練を受けるのが明らかになるのは初。防衛省内には自衛隊法に触れるとの指摘がある。

この荒谷卓氏は武術から自衛隊へ進んだ人物らしい。大学を卒業してゼネコンに就職しようとしていたところ、至誠館の指導者から自衛官になるようすすめられたという。このインタビュー自体も2016年の時点でどのような政治思想をもっていたか確認できて興味深い。
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また荒谷氏は格闘術「ゼロレンジコンバット」を考案した稲川義貴氏と関係が深い。その格闘術は自衛隊に採用されるだけでなく、さまざまな映像作品でも見られるようになった。
この「むすびの里」自体がつくられたのは2018年とつい最近のことだが、退官してすぐに明治神宮至誠館で館長をつとめて、武術家として後進の指導をつづけていたという。至誠館明治神宮にある武術場で、もともと全自衛隊弓道大会がひらかれるように自衛隊とのむすびつきが強い。
ひょっとして『相棒』の関係者は問題を以前から知っていて元ネタにしたのではないか、という想像をせずにいられなかった。


なお、荒谷氏がつくった「熊野飛鳥むすびの里」そのものが、かなりオカルトじみた思想が背景にあるようだ。2019年の講演会のチラシを見れば色々と察せられる。
musubinosato.jp

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*1:脇役を主人公にした外伝をのぞく。