小間使いの珠子と称して、豪邸に入りこんだ朝鮮人のスッキ。豪邸に住む日本人の秀子につかえながら、スッキは愛着を持つようになった。そして秀子が罠にかけられる瞬間、詐欺を手助けしていたはずのスッキが……
『オールド・ボーイ』*1のパク・チャヌク監督による2016年の韓国映画。サラ・ウォーターズ『荊の城』を原作として*2、舞台を日本植民地時代の朝鮮へ翻案している。
- 発売日: 2017/08/21
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GYAO!で10月26日から無料配信予定。流血などの暴力は少ないが、エロティックな場面は多いためか、R15指定となっている。
お嬢さん(R15+) | 韓流 | 無料動画GYAO!
パク・チャヌク監督がこうした映画を撮るのは意外だったが、思えば復讐三部作のサスペンス映画『親切なクムジャさん』*3ですでに百合的な描写はあった。
洗練を増している2010年代の韓国映画にあって、かなり色使いも芝居もキッチュだが、技術や予算の不足をごまかしているわけではない。冒頭でさりげなく植民地朝鮮の市街地をVFXで再現し、日本趣味な豪邸の悪趣味ぶりも大規模なセットで表現しているので、意図的なビジュアルとわかる。
そうした書き割りのような世界で、詐欺少女や偽日本人のような立場の薄っぺらな人々が、偽りの言葉を並べながらいつしか虚実がとけあっていく。スッキは秀子を騙すために献身しながら、愛する気持ちが本心へと変わっていく……という展開がひっくり返るまでが第一部。
第二部からはミステリの種明かしになるので細かくは語りづらいが、いろいろ予想していたことが外され*4、枠組みから目くらましされていたという驚きがあった。
この映画において描かれたことは、すべて劇中で実際に起きたこと。いかにもキッチュで悪夢的な情景で少女たちが苦しめられるわけだが*5、それが登場人物を追いつめる現実なのだと理解すると、より重たく描写がのしかかってくる。描かれたことが事実と理解すれば、さりげない伏線の大胆さにも気づかされるし、それが伏線だったこと自体に意外性がある。
そして、そのように映るものすべてが現実と描いてきた映画だからこそ、たどりついた幸福な情景がどれほど能天気に見えようとも、堂々とした力強さがあるのだ。
*2:舞台や結末の変更ゆえに原作者から原案表記にするよう求められたが、完成作品に満足して原作表記が許された。『お嬢さん』サラ・ウォーターズから“原作表記NG”を受けていた!? 製作秘話が明らかに|Real Sound|リアルサウンド 映画部
*4:たとえば、スッキが遺児を養子として売買していた導入から、日本人のはずの秀子も出自は朝鮮人という可能性を考えていた。それならば秀子を韓国の女優が演じていることも伏線になる。
*5:少女がたがいをいたわる姿を性行為に限らず性的に描きながら、男による女への性暴力は手をふれないどころか裸体すら映らない場面も多いことが興味深い。性行為や性的描写と、性暴力は異なる問題ということを確信的かつ革新的に描いている。