法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『親切なクムジャさん』

オールド・ボーイ*1に続く韓国映画復讐三部作の完結編。
復讐者と犯罪実行者と犯罪指示者のねじれた関係、復讐の代行、復讐を遂げた後の虚無感といった文芸テーマは悪くない。
美術や俳優の演技に隙がなく、海外パートも韓国内パートから浮かず、韓国映画の底力を感じた*2


映画としては出来が良いのだが、監督の美意識が立ちすぎて、観ている側が振り落とされてしまう場面が多い。
一応、オープニングで印象的な白と赤のデザイン的演出みたいに、素晴らしい場面もある。しかし、たとえば主人公の顔が輝いていたという回想場面で、特撮を使って本当に顔を輝かせているのだからたまらない。似た邦画で『下妻物語』を思えば違和感もないのだが、もっとリアルな演出の作品と想像していたので面食らった。
刑務所を出る冒頭の主人公に豆腐を与えようとする場面のように*3、韓国独特の風習を受けた描写が多くて、ちょっと理解が遅れる部分も多々。さすがに題名の「クムジャさん」の意味あいは説明されたが。

*1:感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080411/1207946784

*2:それなり以上の映画しか輸入されず、セットが他の映像作品で多用されていても日本人からはわからない、という邦画に比べた有利さはある。念のため。

*3:白い豆腐は罪を償い清き身体になったという意味らしい。