法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『走れメロス』の結末をふりかえりながら妥当なビジュアル化を考える

太宰治 走れメロス|青空文庫

佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
 勇者は、ひどく赤面した。

つまり上記の描写を想定して、登場人物の姿を想像してみる。

走れメロス 新装版 (講談社青い鳥文庫 137-2)

走れメロス 新装版 (講談社青い鳥文庫 137-2)

走れメロス/くもの糸 (10歳までに読みたい日本名作)

走れメロス/くもの糸 (10歳までに読みたい日本名作)

走れメロス 女生徒 (まんが日本の文学)

走れメロス 女生徒 (まんが日本の文学)

走れメロス 朗読CD付 (海王社文庫)

走れメロス 朗読CD付 (海王社文庫)

ならべてみると海王社文庫のガチムチっぷりが突出している……


実のところ、海王社文庫のみ高年齢女性向けに古典をパッケージングした作品のひとつであり、児童向けにアレンジした他と印象が異なるのは当然だったりする。
文章の印象をおぎなったり、異なる意味をつけくわえる挿絵の良し悪しは、パッケージのコンセプトと照合しながら評価すべきところだろう。


ちなみに私としては、おおすみ正秋監督*1によるアニメ映画が、独立した作品としても完璧だと考えている。

【映画チラシ】走れメロス

【映画チラシ】走れメロス

ずっとDVDかブルーレイで出してほしいと願っているのだが、いまだかなわない。数年後に『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』へ参加するような、そうそうたるアニメーターが参加した映像は、最新技術でリマスターする価値がある。
全体としてハードにアレンジされた物語も好ましい。特に、権力者が他人の献身ですぐ心変わりするような原作の甘さがなく、こまごまと時代の限界を描ききったところが良かった。

*1:TVアニメ『ルパン三世』第1期の前半を監督。