法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとされた選手が略式起訴された件について

選手本人が記者会見を開いて冤罪をうったえているので、実際に盗んだかどうかは別問題として、報道を見ていて感心したことがひとつあった。
JOC 冨田の主張に反論 監視カメラの映像確認「発言に驚き」― スポニチ Sponichi Annex スポーツ

日本オリンピック委員会(JOC)が会見し、冨田の主張に反論した。

 冨田がカメラをバッグに入れている監視カメラの映像を確認しており、警察の聴取に立ち会った通訳も日本語に堪能な大会組織委員会のスタッフだったと説明した。

http://www.hochi.co.jp/sports/etc/20141106-OHT1T50266.html

 肝心の窃盗映像は、警察官がスマートフォンに保存していた会場プールの4つの映像をJOC本部担当者、通訳の3人で見たという。「僕がとっているところはなかった。(窃盗映像があるなら)見せてもらいたいですし、なぜ僕の取り調べで見せてくれなかったのか」と言い切った。

 しかし、事務局で会見の中継を見守ったJOC側は「驚いている」と困惑。映像について、韓国で冨田に帯同した担当者から確認したとして「映像は『JAPAN』のマークが入ったユニホームだった。冨田と分かると報告を受けている」と、平真事務局長らが冨田の主張を覆す会見を開いた。平岡英介常務理事は「(映像で)特定できたから冨田を呼びにいった。カメラをとって、袋に入れていた。第三者? その姿は確認していない」と話した。また、冨田が警察で映像を確認する前、担当者に窃盗を認めていた事実も明かした。

もともと国際大会がおこなわれていたこと、注目される選手であることから待遇が良かった可能性はあるし、この報道だけで冤罪が絶対にありえないとまでいわない。
しかし、監視カメラの映像という証拠がある上で、きちんと通訳やJOCの担当者をたちあわせ、その時は選手も納得したかたちにした。これは冤罪を防ぐために必要な水準であるし、そこまで証拠をかためていたなら裁判する時に検察もやりやすいだろうし、組織も選手を守る方針をかためやすいだろう。罪を認めなければ帰国できないと示唆されたという選手の会見は、日本の冤罪事件を思い出すが、それも報じられたとおりなら客観的に判断しやすいだろう。
今回に報じられた範囲においては、日本の警察や司法が範とすべき状況だったと思われる。


ちなみに『週刊文春』は独占初告白として、会見とは別個の選手インタビューを掲載するらしい。
http://ch.nicovideo.jp/shukanbunshun/blomaga/ar658786
無料公開されている範囲では会見と大差ない内容だが、ブコメが少しひどい。
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id:kawango さもありなんといったところだけど。これはひどい。2014/11/06

これはひどい」という感想は有料部分にあるのかもしれないが、「さもありなん」といえる根拠は何なのだろう。報じられている範囲では、特に誤った捜査がおこなわれた予断を生むような情報はなかったと思うのだが。

id:neojin “「警察に『犯行を認めれば大事にならない。日本にも帰れる』”ロジックが河野談話と同じじゃん!2014/11/07

河野談話は「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ」「本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい」*1と明言しており、認めれば問題が追及されなくなるという内容ではない。
最近に発表された河野談話検証報告書においても、河野談話発表後に韓国政府と協議を重ねたし、しかも韓国は政府としては日本政府の自発的な措置にまかせて関与しない立場だったという*2
そのような河野談話にまつわるデマを根拠にしては、むしろ選手の訴えから説得力を失わせるのではないだろうか。