法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ターミネーター4』

土曜プレミアムで放映されていたのを視聴した。
基本的には、機械に征圧された未来世界で人類が反攻するだけの物語であり、時間移動や追跡劇のような過去シリーズの娯楽性とは方向性が異なる。抹殺のためではなく救助のために追跡するという、過去シリーズから逆転した構図もないではないが、抵抗軍内で動くジョン=コナー視点と交互に物語が進むため、そもそも追跡劇の面白味が弱い。シリーズの未来設定を舞台に活用しているものの、独立した設定でも成立できただろう。


「失われた世紀末」の映画として映像はそつなく、中盤で力つきた『ターミネーター3』と比べるまでもなく見せ場が多いが、どこかで見た映像の寄せ集めともいえる。中盤で巨大人型機械が人々を拉致する描写など、『宇宙戦争』そっくりだ。空中戦闘も『アバター』を思わせる。
各描写が物語になじんでいるので、下手なパクリのように浮いて感じることはないが、目新しいアイデアの一つや二つは見たかったかな。『ターミネーター3』は、救世主となるはずの男が冒頭で土木作業者になっていたりと、パラレルワールドが生まれるタイプの時間移動サスペンスならではの面白い導入部ではあった。


また、ターミネーターが作られた理由は誰でも予想できる範囲なのに、それが判明してからの裏切りに伏線が全くない。その時に機械同士が会話する描写も、わざわざ口頭で会話するのが絵として間抜けだし、地球を制圧しているスカイネットの無機的な恐怖も薄れてしまう。
けっこう他の場面では娯楽アクションとして無理なく伏線や逆転を描いているのに、反撃の要となる場面に最も説得力がない。たとえば、ターミネーターの記憶を取り戻すトリガーが「シグナル」で、ジョン=コナーの不合理な決断がスカイネットの計画をくつがえした、くらいの展開で充分なのだが。あるいは記憶喪失の人間をターミネーター化して利用しただけで、不要になった瞬間に自壊装置を作動させようとしたら、それが途中で捕まった時に無力化されていた、とかでも可。