法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『佐武と市捕物控』第3話 般若/第4話 大江戸暮色

般若の面をした辻斬りが横行し、佐武達はその正体を探ろうと奔走する……配信サイトGYAOでは一週間で二話更新される配信形態だけに、第2話から第4話まで辻斬りの話が続いていることが気になった。辻斬りの動機や物語の構造こそ異なるが、もう少し物語の幅はほしいところ。


さて、真相の見当をつけることは難しくなく、犯人と佐武のやりとりは陳腐とすらいえる。むしろ二つめの偽真相に意外性があった。多重どんでん返し作品では、中途の偽真相を飛び越して真相に気づいてしまうことがある。ただし、この作品では一つめの偽真相で下手人になりうる存在をしぼりこみ、二つめの偽真相で犯人の動機を示唆する構成で、どんでん返しに無駄がない。二時間ドラマを一時間に短縮して見ているようなドラマ『相棒』を、さらに半分の時間に濃縮して見ているような気持ちになった。
映像表現では、実写スチール写真の般若面をキャラクターに乗せた実験性が印象に残る。もちろんほとんどの場面で面は静止しているが、身体の向きを変えて逃げるカットでは角度を変えて撮影した写真をキャラクターに乗せ、わりあい自然に動かしている。しかし後述するように、ここの逃げるカットで般若面を動かしたのは失策だったと思う。


最終的に真犯人は成敗されて般若面が水面に落ち、真っ二つに割れる。ここはスチール写真をスライドさせることで処理しているが、ごく自然な映像にしあがっている。
そして全てが終わった後、縁日で佐武は般若の面を再び目撃する。しかし面を自ら外したその者の正体は、通りすがりの少女だった。そうして人間は誰しも二面性を持つことが示され、縁日の屋台に並ぶ無数の面を映して物語は終わる……この少女が面を自ら外すカットでも、角度を変えて撮影したスチール写真を用い、手書き作画に合わせて動かしてみせている。先述した逃走時のカットと異なり、画面に大写しとなっており、ショッキングなカットになっている……が、意外性を強調するためには逃走時に面を動かすべきではなかっただろう。演出の意外性に徹きれていなかったのが残念だ。


ちなみに第四話も第三話と似た演出方針が用いられ、全てが終わった後の結末において、橋の欄干を動かす面倒な背景動画が用いられていた。ほんの短いカットだが、視聴者の目を引きつけるには充分。
第四話は全般的に作画が良く、中盤で女性が髪を洗う場面など、毛のほつれが白い半裸体にかぶさって異様な色気をはなっていた。冒頭で大火を表現する火炎エフェクト作画も時代を考慮すれば充分にがんばっている。
しかし脚本は単純すぎ、無駄な描写も多かった。正直いって女性の登場場面はサービスシーンでしかなかったな。