橋下徹氏の弁舌がヒトラーを想起させると菅直人氏がツイートしたことについて、なぜか国際法違反だという反発があったり、維新の党が立憲民主党へ抗議をつづけてもいる。
橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。
— 菅直人 衆議院議員(府中・小金井・武蔵野) 立憲民主党 (@NaotoKan) 2022年1月21日
橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。
もちろん国際的にもさまざまな人々がヒトラーになぞらえて批判されてきたし、かつて橋下氏自身も民主党の政策をヒトラーになぞらえて批判していた。id:hokusyu氏が端的にまとめている。
https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2022/01/post-32.php
世界中、政治家など影響力を持つありとあらゆる人物が、ヒトラーにたとえて批判されてきた。アメリカ大統領でも、ブッシュ、トランプ、バイデン。ドイツのメルケルすら、ヒトラーにたとえられたことがある。もちろん個別的な妥当性は別なので、正当な批判から安易な批判、不当な批判まで様々あるが、たとえること自体は論評の範囲に収まっている。
橋下弁護士自身が、2012年、民主党政権が公約になかった消費税増税を目指していることに対して、「ヒトラーの全権委任法以上だ」と批判していた。橋下氏はTwitterで、政党の政策を批判するのと個人を批判するのでは異なると弁明しているが、そのような微細な切り分けでたとえてよいかどうかが決まることはないだろう。
指摘されているように、橋下氏は政党と個人は異なると自己弁護しているが、苦しい後づけというしかない。そもそも菅氏ははっきり主張とはわけて弁舌のみを想起しており、人格批判とは読みとれない。
菅さん、人の話を聞いてますか?俺はあなたのコメントは許してるんですよ。俺の弁舌の評価の一表現だと。ただヒトラーを重ね合わせた個人人格批判は国内外問わずご法度だと進言した。ヒトラーの言葉を使うのがダメなんじゃなくてヒトラーを重ね合わせた個人人格批判がダメなの! https://t.co/Ii2NoaFYFm
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) 2022年1月29日
菅さん、人の話を聞いてますか?俺はあなたのコメントは許してるんですよ。俺の弁舌の評価の一表現だと。ただヒトラーを重ね合わせた個人人格批判は国内外問わずご法度だと進言した。ヒトラーの言葉を使うのがダメなんじゃなくてヒトラーを重ね合わせた個人人格批判がダメなの!
なぜ後づけといえるかというと、正式に抗議した政党の代表である松井一郎氏が、対象に「組織」がふくまれることもふくめて、立憲固有の問題であるかのようにツイートしているからだ。
泉代表が我々の抗議を無視される理由が理解出来ました。時と場合には人や組織に対してヒットラーに見立てて攻撃する事を容認するのが立憲クオリティという事です。 https://t.co/tYlCBs9WV1
— 松井一郎(大阪市長) (@gogoichiro) 2022年1月30日
泉代表が我々の抗議を無視される理由が理解出来ました。時と場合には人や組織に対してヒットラーに見立てて攻撃する事を容認するのが立憲クオリティという事です。
おそらく松井氏は、すでに橋下氏の過去のヒトラー比喩が話題になっていることも、それを受けて橋下氏が自身だけは許される理屈を構築したことも知らないのだろう。
しかしヒトラーになぞらえて批判していい条件が最初から明確にあったなら、わざわざ発言をすりあわせる必要もなく、橋下氏と松井氏の主張は一致したはずだ。
泥縄で菅氏だけを非難できる理屈をつくろうとしているから、統一された国際的な基準などないことが明らかになる。
またすでに各所で指摘されているように、かつて菅氏も個人としてヒトラーになぞらえて批判されたことがある。場所は国会、発言者は自民党議員の石原伸晃氏。
菅直人立憲民主党最高顧問のヒトラー発言については大した問題とは思っておりません。画像のとおり、2011年6月の内閣不信任決議案の賛成討論で石原伸晃代議士は菅直人当時の首相をヒトラーを用いて批判しています。誰が言っても同じことでしょ。 pic.twitter.com/LOKWgBcEQG
— 徳島弁ではなく広島弁をしゃべる三木武夫 議会の子 クリーンな政治を! (@konoact) 2022年1月23日
菅直人立憲民主党最高顧問のヒトラー発言については大した問題とは思っておりません。画像のとおり、2011年6月の内閣不信任決議案の賛成討論で石原伸晃代議士は菅直人当時の首相をヒトラーを用いて批判しています。誰が言っても同じことでしょ。
くわえて、まだ指摘されているところを見かけないが、国会において菅氏がヒトラーになぞらえて批判された場面が他にもある。
国会会議録検索システム
ピーター・ドラッカー氏は、一九三九年に出版された処女作の中で、ナチズムの特徴を権力は自らを正当化するという点に求めています。これは、国民が選挙を通じてナチスとヒトラーに権力を与えた以上、ヒトラーの行うことは全て正しいという倒錯したロジックを意味します。
憲法の定める三権分立を無視し、国会の定める法律を無視する内閣総理大臣は、ヒトラーと同じ過ちに陥っているのではないでしょうか。菅総理にお尋ねします。
東日本大震災から半年もたたない2011年8月のこと、発言者はみんなの党の桜内文城氏。そして発言の約一年後、日本維新の会の結党に参加して政調会長に就任した。同年の選挙で比例代表復活で議員ともなった。
復活当選してすぐ選挙違反が発覚して政調会長を辞任したり、維新の党へ変わるなかで希望や自民党に身をよせていった桜内氏だが、代表が橋下氏で幹事長が松井氏だった時期に党内有力者だったことは間違いない。
桜内氏とともにあった橋下氏や松井氏が、今さらどのような考えで菅氏の比喩表現を非難するのか。約十年で国際的な基準が変わったというなら、最低限その説明は必要だろう。
個人がツイートした責任を政党にもとめるならば、国会で政党の一員として発言した責任ははるかに重いはず。結党前の出来事だからこそ、排除しなかった理由も問われることになる。