法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第16話 みんなのカリスマ!?ほまれ師匠はつらいよ

クラスメイトの百井あきが、輝木ほまれに弟子入りしようとする。おさななじみの風紀委員、十倉じゅんなはそんな百井をたしなめる……
一方、なかなか動こうとしないルールーに、パップルが上司として行動をうながす。そして怪物とプリキュアの戦いが始まるが……


第4話*1作画監督をつとめた渡邊巧大が、今回は作画監督や原画だけでなく、コンテまで担当。
女性の魅力を元気いっぱいに押しだした『タイガーマスクW』最終話のコンテともまた違う、少女たちの迷いと変化のドラマを描ききった。
描きこみや影つけを抑制したフォルム優先のラフな描線に、やや俯瞰で複数のキャラクターを離して配置したレイアウト。かつての細田守の演出を思い出させる。
WOWOWオンライン

『HUGっと!プリキュア』16話の演出について - Paradism

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東映アニメーション作品では珍しく、カメラの焦点をあわせる表現を多用していたことも興味深かった。少女たちの群像劇として、場面ごとの主軸となるキャラクターをわかりやすく明確化。脇はピンボケになって見えづらい、そんな視野のせまさを具象化した演出ともいえるだろうか。


物語も、不完全な少女たちが迷いながらつながっていくドラマとしてよくできていた。
感心したのが、不完全さを全否定する内容ではないこと。百井と十倉は怪物化と浄化をへても、わかりやすい成長はしていない。あくまで不完全な自分を認めて許すだけ。輝木も、表向きの大人っぽさを賞賛されるが、まだ挫折からたちなおってはいない。
さらにキュアエトワールへの変身にはルールーの変心が必要で、空間を自在に移動するアクションをしても百井と十倉に手がとどかない。それでも手をのばすことが、百井と十倉の心をゆりうごかし、逆転のきっかけへつながる。
なおかつ、心象がつながりつつ、一体化までしてはいない。画面でも、ひとりひとり少しずつ距離をあけていることに変わりはない。今回はハグが救いにならない。ゆえにルールーとプリキュアの葛藤も残り、次回へと続いていく。
また、心象の隠喩としてオーソドックスな天候の変化を、雨宿りでキャラクターが予定外に出会う理由としていたことも良かった。演出が突出していた前回*2より、物語の構成要素に無駄がなく、無理がない。