法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』かがみのない世界/ピンキリ!お宝未来鑑定

2007年にアニメ化された短編の再アニメ化と、アニメオリジナルの二本立て。


「かがみのない世界」は、のび太が自分の顔を漫画みたいと悩み、誰も自分の顔を見たことがない世界へ移行する。そこは鏡面反射も、撮影技術もない世界……
美醜をめぐる主観と客観が一致しない世界までは誰でも予想できそうなギャグ描写だが、そこに客観的な姿を伝える道具がもちこまれてから思索SFとしても成立していく。
ほぼ原作に忠実で、ディテールを細かく足す方向でアレンジを加えている。鏡だけでなくカメラもないので街の写真屋は似顔絵屋に変わったり、ミラー関係がないので自動車がまともに運転できなくなったり。街の全体像をロングショットで画面におさめて、その絵が緻密でリアルだからこそ世界観のナンセンスさがきわだった。
ちなみに2007年版は桜井このみ作画監督。思えば最近にリメイクされた「プロポーズ作戦」「二十一世紀のおとのさま」もそうだった。映像面でスタッフが納得していなかったのかもしれない。


「ピンキリ!お宝未来鑑定」は、スネ夫のもっていたコインの価値を理解できなかったのび太が、ドラえもんのもっていた価値鑑定用の秘密道具を貸してもらう……
佐藤大脚本のアニメオリジナルストーリーで、あまり感心できない出来だった。発端となるコインを秘密道具で鑑定してみることすらせず、思いつきのようにさまざまな小道具を鑑定していくだけで、物語の構造が簡素すぎる。後半から売れない漫画家とその妹が出てきてからは、映像作品としてはしっかりしてくるのだが、ここは原作によく似たエピソードがあって意外性が足りない*1
「ピンキリ未来鑑定メガネ」というネーミングも、「ピンキリメガネ」くらいシンプルなほうがそれらしい。一応、将来的な値上がりをふくめて鑑定することが物語の要点にはなっているが。