これが最近のラノベアニメ。「最近のラノベ」のアニメではなく、最近の「ラノベアニメ」である。
原作は未読。以前にアニメ化された映画版からOVAまでは視聴しているが、断片的な記憶しかない。神村幸子の麗しいキャラクターデザインの印象が残るのみ。今回のTVアニメは、田中芳樹の小説をコミカライズした荒川弘の漫画がベースになっている。
制作陣は、阿部記之監督に上江洲誠シリーズ構成、制作会社はサンジゲンという、ちょっと珍しいとりあわせ。つながりが深いのは、キャラクターデザインの小木曽伸吾が阿部監督の『BLEACH』で作画監督として活躍していたくらいか。
正確には制作はサンジゲン一社ではなく、派生した手描きアニメ制作会社のライデンフィルムとの共同。3DCGで表現された都市は良かったが、3DCGの軍勢は期待したよりも凡庸だった。むしろ手描き作画で群衆をしっかり動かしていたことに感心した。
本編は、軍勢の派手な衝突という見せ場から、浮世離れした主人公をわかりやすく登場させ、奴隷にさせられかけた捕虜と対比。城塞都市を立体的に逃げまわりながら、主人公と捕虜の違いを描いていく。
固有名詞こそ多いが、設定は最小限で説明も少ない。映像と会話で物語をつむぎ、動きつづける映像とともに作品世界を描いていく。奴隷を保護された存在とみなして肯定し、素直に奴隷になるよう善意から提案する主人公は、なかなか個性的で面白い。
わかりやすいサービスは少なく、地味といえば地味なのだが、映像作品としてやるべきことをやっているので視聴後の満足感は高かった。