法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『隻眼の少女』麻耶雄嵩著

異なる年代の二部作で描かれる、少女探偵の誕生。
とある寒村に少女探偵が来訪する。やがて巫女候補の首が何度となく切断され、たまたまいあわせた主人公の周りで死が満ちる。
受けつがれていく少女探偵の名前と能力は、雪深い村の因習と殺戮に、どう対峙するのか?


ちょっと内容のわりに分厚すぎるし、例によって舞台の人工性は気になるが、それ以上に人工的な名探偵を成立させるための設定と思えば許せる。
ほんのわずかな手がかりを拾いながら、推理していく手つきもいい。最終的な真相から考えれば厳密な推理ではなかったとわかるが、理屈をもてあそび偽の解決を重ねていく楽しみはあった。
真犯人像は、けっこう本格推理において古典的ではある。この作者ならばやりかねないと、第一部を読んでいた時までは念頭においていた。しかし第一部の事件が終わってから、数十年すぎて第二部に移行して、人間関係ががらりと変わったことで、完全にめくらまされてしまった。真犯人が姿をあらわす終盤、悪夢的で道化的な情景は、なかなか印象に残る。