法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『あかりや』がJコミ配信中

特殊な灯を売る店を舞台に、さまざまな登場人物の奇妙な顛末を描く連作短編集。
連載されていたホラー漫画誌ネムキ』が今年に休刊したため、一巻で終わってしまった。そこで作者が版権をひきあげ、Jコミで無料配信中。
あかりや - 赤美 潤一郎 | マンガ図書館Z - 無料で漫画が全巻読み放題!
きれいに完結しているが、結末の後も物語の舞台は存続している。Jコミ巻末の作者説明によると同人誌で続編を発表中とのこと。
最近の作品だけあって、絵は現代的かつ上手い。線が整理されていて見やすいのに、必要な場面ではちゃんと生々しい。黒ベタで白い余白とのくっきりした対比を作り、光と影の世界を表現している。


物語も一話完結のショートショートとして手がたい。
個人的に面白かったのは第6話だ。どうしても特定の藤子F短編を想起してしかたなかった。他の話もショートショートとしてベタな設定や展開ではあったが、特定の作品を想起させられることはなかった。もちろん、導入や展開こそ酷似しているが、展開を転がしていく登場人物の心情が個性的で、読後感もけっこう異なる。藤子F作品を意識していたとしても、むしろ良質なオマージュといえるだろう。
逆に、サスペンスとしてはベタな真相の第5話などは、明確な描写や説明をさけて、読者に想像させるよう構成してある。どちらにしても、専門漫画誌に連載されていただけあって、ジャンルへの基礎知識がある読者を想定しているからこその完成度といった印象をもった。