法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ほんもの3Dテレビ/その日,すべてがネズミに!

今回はアニメオリジナル短編2本。動画工房制作協力回なので作画は良い。予告映像を見ると来週の作画も良さそうだ。


Aパートは、アナログテレビでも立体映像で見られる上、立体にさわると取り出せてしまう秘密道具が登場する。テレビの中から人や物を取り出す物語は、原作の「テレビとりもち」とほとんど同じ機能、同じ物語展開だ。
しかし、のび太達がテレビから物を取り出すことで起きる悲喜劇を、スネ夫達が普通*1の3Dテレビを見て間接的に知っていくという脚本構成は独特で面白い。
原作「テレビとりもち」のしずちゃんは、のび太の軽はずみでアイドルからサインをもらえた。一方、今回のアニメしずかちゃんは、自分の軽はずみでアイドルにさわってしまい、しっかりサインをねだる。比較的後期に描かれた「テレビとりもち」のおとなしいしずちゃんに対し、アニメが原作初期のイメージで描いているのは珍しい。
あと、ブラウン管のテレビを立体的に見ようとして、のび太がモニターを横から見ているいじましさが子供時代を思い出させて良かった。


Bパートは、全てのネズミを消そうとしたドラえもんが、秘密道具のボタンを押し間違えて、全てをネズミに変化させてしまう。のび太が持っていったアイテムを目指し、ネズミ化した人々が集まっているチーズフェアへドラえもんが向かう。
清水東脚本、木村哲コンテで送る今回は色々な意味で変化球。ドラえもんが事件の蚊帳の外という展開は複数あるが、のび太が蚊帳の外という展開はかなり珍しい。人間だけでなく猫もネズミ化していく恐怖はドラえもん視点ならでは。
しかも事件を認識できるのが世界改変してしまったドラえもん一人だけという展開は、記憶では他にない。事件が終わった後に記憶しているのもドラえもんだけなので、自業自得とはいえ友達のために勇気をふりしぼった事実を誰もたたえない切なさが、いい余韻を生んでいた。全てを台無しにする顔パックオチで同じオチを使った原作マンガとの連続性を感じさせるところも悪くない。
今回はドラえもんに通じていない脚本家ゆえの自由度が良い意味で感じられた。ただ、台詞へしつこく「チュウ」を入れるギャグは、古すぎて笑えなかったな。
映像も良かった。止め絵で省力しても、全世界がネズミ化する光景にはインパクトがある。そして作画リソースをチーズフェアへ投入。エレベーターからあふれ出るネズミ群集がていねいに作画され、タケコプターを使ってドラえもんが突き進む場面では勢いある背景動画が楽しめる*2。そしてデパートの窓から抜け*3、帰宅して普通の人間に戻るまで、微妙に特徴ある絵柄の作画が楽しめた。担当は誰かな*4

*1:というには超巨大だし、立体感も現実と比べて演出で誇張されているが。

*2:天井を見上げる構図で面倒さを回避しているし、あまり精緻でもないが、驚くネズミ人の顔がすぎさるタイミングやドラえもんの動きが気持ち良い。

*3:普通の窓は開かないはずだが、オフィスの窓か避難用かな。

*4:作画監督の三輪修、原画の古沢英明が怪しいと思うのだが……