法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『エレメントハンター ELEMENTHUNTERS』MISSION.1 異世界へ!

NHK教育で土曜日18時から放映開始したSFアニメ。原案は脚本家の伊藤和典、シリーズ構成は荒川稔久。監督は奥村よしあき、ホン・ハンピョの連名。
キャラクター原案は奥村大悟。どこかで見た衣装デザインと思っていたが、3DCGの美少女キャラクターを当時としては違和感なく描いたゲーム『ゆめりあ』のデザイナーか。


まず、きちんと絵になりつつ理屈がわかりやすい基本設定がSFアニメとして素晴らしい。一種類の元素が消失して大陥没が起き、消失した元素が異世界でモンスターになり、モンスターを退治することで災害の進行を防ぐ。今回は窒素の消失をめぐる物語で、異世界における芋のSF設定*1が面白い。
前半で伏線を張って後半で解決、主人公を補佐する存在や敵対する存在は次回に説明という流れも過不足なく、個々のキャラクターから基本設定まで理解でき、初回としては教科書的とすらいえる。
ただしドラマを見ると、いかにも荒川稔久脚本らしく、キャラクターの思考がどこかずれていて、ともすれば現実味を損ないそうになる。「幽霊城」に対して、作中の現実感を線引きするための、第三者を想定した突っ込みを入れてほしい。あるいは、演出でキャラクターの反応を抑制し、白昼夢のように描写するとか。SF描写で充分に風変わりな世界を見せているのだから、キャラクターまで異常にすることはない。アンドロイドメイドという存在を肩透かしに使うという対象年齢を考えれば高度なギャグとか、荒川脚本らしい良さも色々あったのだが。


予告映像ではわからなかったが、少なくとも本編キャラクターは全て手書き作画の様子。キャラクターの色指定が少し独特で、頭髪の色が薄いと睫毛の色も薄く描かれているのが面白い。
クレジットを信じる限り、作画作業は韓国のみで行っているらしいが、これといった破綻も見当たらず、上等だろう。枚数が多く動きがなめらかで、作画修正が行き届いているし、背景動画も破綻なく、意外とアクションでも見所がある。ただ、動画が均等割りっぽくて、動きにメリハリがなくて面白味に欠けるカットが多い。人形か3DCGのように感じた原因か。キャラクターデザインこそ重ねて垢抜けてきているが、作画技術全体では以前にNHKで放映された韓国製TVアニメ『少女チャングムの夢』と似た印象だ。
しかし、『少女チャングムの夢』と比べて撮影技術は大きく改善されている。コンテが日本人であるおかげか、PANが機械的な処理でなく、適正に速度を変化させている。セルと背景の質感もなじんでいて、どちらかが目立つということもない。
あと、キャラクターデザインが端正なだけに、デフォルメされた表情や殺陣とのリアリティレベルが合っていない感も何度かあった。いくら異世界とはいえ、あれだけ凄い動きをさせるには、何らかの補足描写がほしい。ここは初回からでも特殊なスーツを着せるべきだったと思う。


先鋭的なSF設定と、一周回って新しい本編という組み合わせで、実にNHKアニメらしい雰囲気。
前述したように脚本や作画では違和感も散見されたが、全体的には面白かった。違和感も、視聴を続けていく内に慣れることを期待したい。

*1:予告映像のエントリで書いた役職は誤り。金子隆一氏はSF設定で、科学考証には別人が立てられている。