法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『魔法つかいプリキュア!』第29話 新たな魔法の物語!主役はモフデレラ!?

魔法学校の図書館にシンデレラの絵本があった。寮に帰っても読みつづけるモフルン。
すると夢の中でモフルンはシンデレラになり、周囲の人々も絵本の人物として登場する……


4年前の『スマイルプリキュア!』第39話*1を思いださせる楽しい童話パロディ。
まず夢に入る前、図書館で絵本を楽しんでいる場面で感心した。マホウ界でも同じ童話が伝えられていて、しかし魔法使いキャラクターを主人公に位置づけていると説明される。いわゆる現実世界をナシマホウ界と名づけた設定を初め、この作品は本当にきちんと異世界側の視点を世界観におりこめている。それが異世界の実在感を生むし、違う視点で現実世界を見つめなおす楽しさもある。
夢に入ってからは通常メンバーが仮装をしているという描写にとどまるが、冷凍ミカンなど本編でのドラマも反映されているし、稲上晃作画監督らしい華やかな作画は見ているだけで楽しい。本筋では特に見せ場がなく退場した第1部の敵幹部が、ここでシンデレラの母や姉になって再登場したことも悪くない。特に、亀から変化させられた幹部が水が苦手というギャグは笑った。


そしてプリキュアに変身しての決戦だが、過去シリーズでも何度かあった変身バンクの変更が大規模になっていた。
みらいやことはがネズミになっているため、いったんリコの体全体をつかんでしまったりお姫様抱っこしたり、キュアフェリーチェだけミニサイズのまま変身したり。モフルンはシンデレラの衣装のまま変身バンクで動きまわるという手間ひまをかけている。
戦いも、舞踏会らしくダンスで決めるという謎展開からプリキュア音頭という飛び道具。いくら夏祭りの時期だからといって……と思いつつ、しかし今作は戦闘に必然性をもたせなかったので、むしろ物語としては自然になった感があった。
現実に帰還していく結末も、民話らしい類型で童話世界と違和感なく整合して、魔法使いとしての成長を感じさせるドラマとしても成立している。あくまで自己パロディ的ではあるが、今作で最も素直に楽しめるエピソードであった。