法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』空とぶサンマがやってきた/昔のカキの物語

アニメオリジナルの前半と、ほぼ原作通りの後半と。M.S.C*1が制作協力して、かなり絵柄の癖がつよい。


「空とぶサンマがやってきた」では、のび太が旬の魚としてサンマに興味をもつ。そこで海に行き、秘密道具でペットにして家へとつれかえるが……
ペットの魚を活用する前半までは、同じ秘密道具「ペット用魚エサ」が出てくる短編「空とぶさかな」と同じ。さまざまな魚が登場する展開から、季節にあわせてサンマが登場するように改変されただけ。無数の魚が浮遊する描写に3DCGをつかっているが、サンマという一種類にアレンジしたことで制作リソースをおおいに省力できたことだろう。
展開が変わってくるのは後半から。ヒッチコック監督の『鳥』を思わせるホラーに転調していく。ママに調理されそうになったサンマが怒って逃げだし、住民をおそいはじめる。ジャングルジムに無数のサンマが群れているシュールな絵面はなかなか恐ろしい。群れとなって襲いかかり、空気砲での攻撃も失敗する展開はよくできていた。
かなり絵柄は癖がある。伊勢奈央子作画監督が初参加した「のび太航空へようこそ」*2よりアニメとして楽しめる作画もあったのだが。公園の名も無き女性など、ちょっと藤子Fキャラらしくない髪型なのも驚いた。


「昔のカキの物語」では、のび太が買ったばかりの漫画にパパが興味をもつ。一方、のび太しずちゃんにおかえしをしようと、家に昔あったカキの木を思い出すが……
ほぼ原作を忠実にアニメ化していて、映像作品としてテンポが悪いこともない。やや絵柄の癖が気にかかるのと、パパの子供時代にしては過去の風景が古すぎると感じる以外は、まずまず良いアニメ化だった。ちなみに原作でしずちゃんが持ってくるのは、イチジクではなくビワ。収穫の季節をあわせるための悪くないアレンジ。
しかしプロットだけを見ると、そもそも導入のエピソードに関連性が薄い。タイムマシンで過去にいった時にもパパに邪魔されたり、ひとりのキャラクターを中心にしつづけているため、読んだり見ている時は気にならないのだが。

*1:主に下請けで活躍している会社だが、公式サイトが充実していて読みごたえがあることで有名。M.S.C animetion studio Site

*2:『ドラえもん』のび太航空へようこそ/神さまごっこ - 法華狼の日記