法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

アニメで手持ちカメラ

下記エントリのコメント欄で言及されていることに気づき、情報提供をかねてコメントした。メモをかねて転載しておく*1
日本アニメの”手持ちカメラで現場の臨場感”表現は誰が始めた? ロボネタの異端・FLAG - 17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

厳密に誰が最初に始めたのか?

AKIRA』以前にも1985年の『銀河鉄道の夜』の冒頭で、ゆらゆらカメラが左右にゆれながら降りていきます。
 人間には撮影困難なので手持ちカメラとは感じさせませんが、一般的な主観視点とも違う。あえていうなら神の視点でしょうか。


実際にカメラで撮影しているかのように手ぶれを表現したのは、『THE八犬伝 新章』第4話「はまじ再臨」が最初といわれていますね。
該当するのは序盤。田舎道を歩いている女性二人と侍一人、それぞれ正面からとらえつつ画面がゆれます。ポイントは、被写体はゆっくり歩いていること。実写でもFIXで問題ない場面なのに、あえてグラリグラリ画面をゆらしたのが凄かった。高速移動する被写体をカメラがとらえきれない描写なら、すでに板野サーカスのような技法として確立されていました。

こうした”手振れ映像の現場感”にはカメラを使うのがプロやアマだけではなく、一般の家庭用で使えるハンディカムの浸透も大きいでしょう。

「はまじ再臨」の先駆性はひとえにコンテ演出を手がけた大平晋也の力でしょうけど、おっしゃるように8ミリやビデオカメラが一般に普及して、アニメーターが個人で撮影して参考にできるようになったという時代性もあると思います。
情報源がうまく見つけられなかったのですが、『THE八犬伝』無印1話のチャンバラは、アニメーターが動いて撮影したものを参考にしたという話を聞いたことがあります。


 しかし1990年代なかばにも、アクションシーンでやたらと手ぶれカメラが多くなった時期がありました。『恋する惑星』の影響という説を見かけましたが、未見なので何ともいえません。
有名なところで吉成鋼が担当した『ダイナギガ』のOPがあります。アニメーターがやりたいことをつめこんで、カメラを動かしすぎて全体のメリハリが欠け、不自然だったのが難でしたが……

FLAGはおそらく唯一ロボットアニメというジャンルの中で生々しい現場感を見せようとしたのではないでしょうか。

近年のアニメでモキュメンタリーを試みた歴史については、以前に下記エントリとしてまとめたこともありました。
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120516/1337186384
 橋良輔監督は、1983年の総集編映画『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』で、TVシリーズを素材としてモキュメンタリーをつくるという試みをおこなっていました。構図や作画はTVのままなので凡庸ですが、適度に雑でドキュメンタリーっぽい編集がリアルだったり、あえてノイズをかけた撮影効果が独特で、けっこう面白い作品です。
湾岸戦争イラク戦争の状況のニュースでも多用されてきた戦闘機に搭載されたガンカメラによる冷たい攻撃の映像の連続」も、20世紀末の『ガサラキ』で引用済みです。TVで断片的に報道されるロボットの戦闘をくりかえし描写した前半には、特異なリアリティがありました。全体としては怪作ですが、フィルターを用いたさまざまな撮影効果など、先駆的な表現がいくつも試みられていました。


ところで書きこみに失敗して気づいたが、はてなブログのコメント欄はコメントしたユーザーが削除できる。はてなダイアリーでも過去には可能だったが、いつのまにかブログ管理者しか消せなくなっているようだ。
また、コメントの空白行が反映されず、二度改行する必要がある。これは、はてなダイアリーを書く時と同じ仕様だ。

*1:転載時、引用符を引用枠へ変更した。