法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』カラダWEEK 明日話したくなる! 歴史が動いた瞬間SP

「神様・ベーブルースから三振奪った17歳少女の数奇な人生」は、マイナーリーグプロ野球選手となった17歳の少女が、プロモーション的な練習試合でニューヨークヤンキースと練習試合。先発投手がすぐ降板して、自身も体調不良を訴えるまで、きわめて短い登板だったが、ベーブ・ルースらを三振させたという。
1931年の当時、八百長という疑惑があったとのこと。事実、米球界は1919年のブラックソックス事件が尾を引いていたころだ。とはいえ、見世物的な待遇に不満をいだいて23歳で球界を去るまで、初の女性プロ野球選手として存在していたことも事実だ。
「廃墟になった歴史的建造物」は、テムズ川に残る爆撃監視塔や、監視塔から放射状に個室棟がのびる刑務所、冷戦時のピラミッドのようなレーダー基地、二酸化炭素排出が多すぎて閉鎖した火力発電所の冷却塔を紹介。いくつかは見おぼえがあるが、やはり巨大廃墟は見ているだけで楽しく、それぞれの歴史を感じさせる。
「赤いバンダナの男」は、911同時多発テロにおいて、人々の救出に走りまわった青年を紹介。消防士の父を持ちながら金融業についた青年ウェルズ・クラウザーが、ひとつだけ使える非常階段を発見。人々を呼びよせたり、背負って階段を降りたり、消火器を分担して使ったりと活躍。飛行機が激突したより上階の生存者18人のうち、10人がウェルズに助けられているという。
そして証言をつきあわせて、ウェルズは3回も階段をのぼりおりしたと思われる。そして1階で消防隊員と救助活動をしていた時、崩落で死亡。行方不明となってしばらくして、遺体が発見された。立派なたたえるべき人だとは思うし、両親も息子を誇りに思っているようだが、それでも最後は自分の命を大事にして欲しかった、と日本の視聴者として思った。
「変わるケニアの支援事業」は、これまでのような病院や学校の建設ではなく、貧困者へ直接に大金をわたすという大規模プロジェクトの紹介。現地の貧困者は、これまでの支援がネコババされているといきどおる。なるほど、考えてみると政府をとおした公的支援は、どうしても事業受注者がうるおう制度になってしまう。
そして実際に現地での大金*1を一気にわたされた貧困者は、柵のある立派な家を建てたり、楽器を購入してバンド活動をしたり。前者は野生動物を恐れて子供を親戚の家へ毎晩つれていった時間で仕事ができるようになり、後者はそのバンド活動で充分な収入をえられるようになったという。
他にも、定期的に少額をわたされた貧困者は、難病のための子供の健康保険をはらいながら、炭焼き仕事の将来のため植樹をつづけたりする。支援者によると、誰も無駄づかいしないし、金銭的な余裕のおかげで家庭内暴力も減ったという。
貧困がただ金銭の不足だけでなく、余裕がないために非効率的になり、投資にもまわせない問題だということを実感できる内容だった。念のため、よく似たベーシックインカムの先進国における実験はまだ成功していないと聞くし、このケニアの支援事業についても長期的で広範な追跡が必要な段階だとは思う。しかし、示唆に富む内容であることも間違いない。

*1:約11万円は日本でもちょっとしたものだが、わたされた現地女性には5年分の年収にあたるという。