法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『高地戦』

朝鮮戦争末期、韓国軍と朝鮮人民軍が一進一退をくりかえす最前線。そこのワニ中隊にいるらしい内通者をさぐるため、ウンピョ中尉が派遣される。
遅れて聞こえる銃声音から「二秒」と名づけられた敵狙撃手と戦ったりしながら、ワニ中隊とウンピョ中尉は唖然とするような顛末をむかえる……


『タクシー運転手 約束は海を越えて』*1チャン・フン監督が2011年につくった韓国映画。極限状況を舞台にして国家を風刺する寓話として完成した。

高地戦 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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戦争映画としても風刺劇としても韓国内外で高い評価を受けた作品であり、GYAO!で8月19日から無料配信が予定されている。
https://gyao.yahoo.co.jp/p/00698/v07538/
なお、日本の予告映像や商品説明などでは意外性を弱める情報を明らかにしており、ネタバレを好まない鑑賞者は他に見向きせず作品を見ることを薦める。
事前情報をもたずとも、戦争映画を求めているなら満足できるだけの完成度は間違いなくある。ワニ中隊には愚連隊的な魅力があり、敵軍も好敵手として個性的。ウンピョ中尉も主人公らしく誠実で好感がもてる。
映像も『プライベート・ライアン』以降に求められる水準に達している。市街地戦こそないが、それらしい風景をロケーションして、荒地に見えるよう土地を削ったり盛ったりして、大規模なエキストラと爆薬で凄惨な情景をつくり、自然なVFXでおぎなっている。


他の韓国映画でたとえると、朝鮮戦争全体を描いた『ブラザーフッド*2をブラッシュアップして、状況を限定して『JSA*3のような物語を展開した作品、といったところか。
ブラザーフッド』の終盤に台詞だけで語られる戦線を抽出し、さらにフィクションとしてデフォルメ。大きく向上した軍用機のVFXがリアリティを支える。そこに『高地戦』と原作者が同じ『JSA』的な不祥事調査を組みあわせ、そのサスペンスが物語を牽引する。
終盤の展開も、事前情報をもっていてなお衝撃を受ける。かなり史実とは異なるらしいが、個人の思いや願いを国家がぬりつぶす悪夢を描くにあたって、よくできた寓話であることはたしかだ。第二次世界大戦の日本では、よく似た状況が沖縄などで実際に大規模に展開されていたことを連想せざるをえない。