漫画家志望の青年がキュアット探偵事務所に助けを求めてきた。バッグに入れた原稿が野菜や食パンやエプロンにすりかわっているのだという。初めての依頼に奮起した小林と明智は街に向かう。他人とぶつかって落とした時、似たバッグととりちがえたと推理したのだ。バッグを落とした場所で、ベンチのペンキを塗りなおしていた老人からバッグをさがす女性の話を聞いた明智たちだが……
初回から4連続で村山功シリーズ構成が脚本。作画監督は青山充だが一人原画ではなく、予告映像を見ると次回の作画に力を入れるために手の早いベテランに今回をわりふったのかもしれない。少女キャラクターはいつもの青山らしい絵柄だが、今回初活躍の敵幹部ゴウエモンはデザインが合っていて悪くない。
ミステリとしては古典的なとりちがえネタで、それを真相として謎解きさせても幼い視聴者には新鮮かもしれないのに、とりちがえは前提として話が進む。思えば2021年の子供向けアニメ映画でもひとひねりをくわえるくらいはしていた。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』 - 法華狼の日記
物語もどこかで見た要素だけを組みあわせてできている。
とはいえ、小道具のとりちがえという古典的なネタは、一方のトランクを最初は布につつませておくことで予測できないように工夫。
それでも各所で聞きこみをして情報を集めていく展開から、今回は謎解きではなく刑事ドラマのように調査だけで終わらせるのかなと思ったら、ちゃんとCM前に推理で真相にたどりついた。
正直にいえば今回は真相がわかりやすい。途中で登場したペンキ塗りの老人と絵画教室がいかにも怪しく、そこからエプロンは塗料で汚れないためのもので、食パンはスケッチを消すためにつかうと見当がついた。さらに途中で聞きこんだカレー屋から野菜の芽が出て傷んでいると指摘された時点で、野菜は静物画のモデルだともわかった。子供向けの手がかりとしてバッグだけでなくエプロンも汚れていること、そして途中のペンキ塗りで塗料と気づきやすくさせたいことも理解できた*1。
しかし低年齢向けアニメで謎解きミステリを成立させる工夫がこらされていることには感心する。食パンが消しゴムのようにつかえる*2という雑学は、主人公たちの推理ではなく、ゴウエモンについてきた新人敵幹部の森亜るるかが主人公より先に気づいたように描写することで、キャラクターの格をあげつつ専門知識をもたなくても主人公たちと同じ推理はできるかたちに処理してみせた。
また調査の過程で似顔絵を描いたり、依頼人を漫画家志望者に設定することで、絵画教室という真相がモチーフの統一感を生む。そして漫画家として大成するという未来の知識が、依頼人のドラマをしめくくる。
ここまでオリジナル脚本で、子供向け30分枠アニメでミステリとしてもキャラクタードラマとしても成立していることに感心させられた。
4話目にして怪盗が盗むのではなく、トラブルで行方不明になった物を探す競争にして、ストーリーに変化をつけつつ卑怯ではないキャラクターの敵幹部を出せたこともうまい。
こうなると気になるのは、ひとりの脚本家が連続登板するのであればネタ切れを起こさないか、他の脚本家が担当したエピソードでもクオリティを維持できるのかということ。いっそのこと児童向けミステリを書ける作家が脚本や、そうでなくてもアイデア出しで参加してほしい。同じ東映の『ゲゲゲの鬼太郎』のTVアニメ4期で京極夏彦がオリジナル脚本を提供したことがあったように。