法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『誰よりも狙われた男』

ドイツ諜報機関のベテランスパイが、自国に入りこんだイスラム過激派と協力者を調べようとする。そこで米国CIAの協力をとりつけるが……


2015年の米英独合作映画。『裏切りのサーカス』と同じくジョン・ル・カレが原作で、ひたすら地味に治安を維持しようとする公務員としてのスパイを描く。

誰よりも狙われた男 スペシャル・プライス [Blu-ray]

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かつての冷戦の最前線を舞台にしながら、名所旧跡を使ったアクションもなければ、謀略をしかけあうコンゲームもない。かといって現実の諜報機関を描いているほどリアルでもなく、拉致監禁ぐらいは実行される。
ドラマの主軸は、力押しの強行手段を選ぼうとするCIAに対して、腰をすえて治安を守ろうと耐えつづける現地諜報機関の葛藤だ。
主人公側は、拷問による自白など信用できないと会議で指摘するし、イスラム過激派を殺害や逮捕するのではなく懐柔することを目的とする。


これはいわばアンチ『007』でアンチ『24』な作品だ。ヨーロッパらしい文芸的なスパイ映画としても悪くないが、派手なスパイアクション大作と対比しながら観てこそ楽しめる。
ジェームズ・ボンドジャック・バウアーのような主人公が現場をかきまわし、泳がせていた関係者の線を切り、育てた協力者を使い捨てる……それを利用される現地諜報員側の悲哀として描いたといっていい。
終盤の米国の唖然とする行動など、さすが大正義アメリカと思わざるをえず、つい笑ってしまうほどだった。