なかなか楽しい匿名ダイアリー記事があった。秘密道具の異なる使用法で、より短時間で冒険を終わらせようとする思考実験だ。
大長編ドラえもんタイムアタック
ブックマークもらったので調子に乗って後編 ※よく知ってる大長編はここら..
最初のルール設定もよくできている。秘密道具はレンタルや新規購入する描写が複数あり、その時に持っていないから作品で使わなかったという想定は自然なものだ。
ルール1:その作品内で使っていない道具は、持っていないものとする(ソノウソホントとか使用不可)
ルール2:問題が起こってからスタートするものとする(大魔境でジャイアンが道具を置いて行く前にどこでもドアでゴールに行くとかは不可)
各作品の考察も興味深い。いくつか指摘を加えながら紹介したい。
まずは『のび太の恐竜』。
【スモールライト】で地球を小さくする(タケコプターの一飛びで日本に届くくらいまで)
これはスモールライトの効果範囲を超えている。他の大長編で何度となく武器として使われているが、敵の数体をまとめて小さくするのが限界だ。
もう少し穏やかな方法を使うなら、「ドラえもん以外の全員を【四次元ポケット】に入れ、【タケコプター(人数分)】をドラえもん一人でローテーションする」または「【ラジコンねんど】で船を作って日本まで渡る」等でも良い。
このアイデアは素晴らしい。ドラえもんも疲労する描写があるから、移動も仲間でローテーションすると良いだろう。
ただし、この物語は日本に帰るだけでは解決しない。物語の序盤から恐竜ハンターにねらわれているからだ。はてなブックマークのid:makaserori氏による「恐竜はタイムマシンで現代に戻ってから移動したほうが早いと思う」というアイデアは、むしろ恐竜ハンターとの対決を遅らせてタイムアタックとしては失敗になるだろう。
おそらく移動時間こそ大幅に短縮されるものの、恐竜ハンターの基地近くで接触され、その騒動でタイムパトロールの内偵に引っかかるという原作展開に戻って終わる。
『のび太の宇宙開拓史』。
無理。
コア破壊装置やガルタイトの本社に攻撃を仕掛けるのに有効な方法がない。
たしかに、ガルタイト本社は警察によって壊滅したわけであり、ドラえもんたちの介入が時間を縮める効果は期待できない。ドラえもんたちの知るガルタイト鉱業は、狩りという建前で畑を荒らして立ち退きをせまるような、対症療法で戦うしかない行動ばかりで、警察を早く動かす材料は入手できなさそうだ。
しかしコア破壊装置そのものは原作と同じくタイムふろしきで解決できるはず。決闘をもちかけるギラーミンを無視すれば数分の短縮にはなる。誰も喜ばない展開だが。
『のび太の大魔境』。
任意の時点で【先取り約束機】を使って終わり。
まったく異議なし。「十人の外国人」の予言が語られた時に先取り約束機も登場していたので、そこで誰かが気づけばそのまま最終決戦になだれこめる。
『のび太の海底鬼岩城』。
『のび太の恐竜』のアイデアの応用だが、よくできている。ただし、しずちゃんは捕まって縄でしばられるので、その縄が四次元ポケットをふさがないよう注意する必要があるだろう。
『のび太の魔界大冒険』。
大魔王と戦う前のどこかの時点で【ほんやくコンニャク】で魔界歴程を解読していれば一方的に勝てる。
前回書いた方法だと、魔界大冒険で満月博士が死ぬのを見落としてた。
つまり満月博士を救うため、どちらにしてもデマオンの居城まで行かなければならない。そこで博士を救ってからデマオンの心臓を破壊しに行くしかない。
しかも、どこかの時点で時間移動して、物語の発端となる石像を存在させなければならない。偽物の石像を作って誘導することもできるが、それなりに時間も手間もかかるだろう。
つまり“魔界に行く、時間をさかのぼる、また魔界に行く、宇宙に行く”という行程が“魔界に行く、時間をさかのぼる、宇宙に行く”という行程へ短縮されるくらい。
『のび太の宇宙小戦争』。
タイムマシンでしずちゃんが拐われる前に戻る。
首をかしげて原作を読み返したが、たしかにラジコン改造にかかった時間をとりもどそうとする台詞が1コマあった。最後まで使った描写はないのだから、整合性のためにも無視したい台詞だ。
どちらにしてもピリカ星に行かなければならないし、現地人の反クーデターに協力する構図は守るべきだろうが、たしかに敵を倒す時間がかなり早まる。
『のび太と鉄人兵団』。
鏡面世界側の出口に【スモールライト】を照射して兵団を出てくる端から小型化し、ダメ押しで【ビッグライト】で巨大化したザンダクロスを使って殲滅する手もある。
『のび太の恐竜』と同じく、これはスモールライトの効果を過大評価している。それでも鏡面世界の出口に罠をしかけるアイデアは悪くない。
【タイムマシン】使えば終わる事件なので、はよ使えって話ではあるのだが・・・
解決法としては安易なものだが、タイムマシンを結末まで使えなかったことには必然性がある。リルルの情報がなければメカトピアの場所がわからないし、歴史改変の起点が何かもわからない。
しかもリルルがドラえもんたちに情報をわたしたのは、冷静な議論の結果などではない。人類の不合理な行動に価値観をゆりうごかされ、さらに仲間を説得しようとして失敗したという過程がリルルの感情をゆりうごかした。
情報収集のための説得ゲームと考えると、原作よりドラマを短縮することは不可能に近い。
『のび太と竜の騎士』。
そもそも敵がいない作品なのでやりようがない。
ポップ地下室が聖域になることに気づいて地底人を説得できれば短縮はできる。しかし、どちらにしても恐竜が絶滅する直前にタイムスリップする必要があるし、地底人と戦う数時間しか短くできないか。
【タイムマシン】で戻る先を【ヒーローマシン】放置の24時前に移動(この作品内では、タイムマシンの指定時間に前後24時間の誤差が発生するため)
のび太が目撃した孫悟空を、のび太自身が演じるタイムループを作る必要もある。のび太たちの冒険が西遊記のモデルとなったというタイムループも示唆されている。
原作がなぜそうしなかったのか謎。
念のため、この作品はアニメオリジナルストーリーで、原作は存在しない。考察元の作品を指しているなら「映画」と書いてほしい。
最後に『のび太の日本誕生』。
原作がベスト。
ギガゾンビがタイムロックを解除できるレベルの23世紀の時間犯罪者で、所持しているひみつ道具について「格上」と思われるため、タイムパトロールに通報する以外に勝機はなかったと思われる。
ちなみにリメイク映画では原作にも登場するアイテムのみを使って、タイムパトロールに通報せずに勝利している。ただし、いったんドラえもんが負けることがギガゾンビの油断をさそう意味があって、やはりタイムアタックは難しそう。
とにかく『のび太の恐竜』で示した四次元ポケットに他の人間が入るというアイデアにはまいった。ちょっとアニメオリジナルで見てみたい描写だ。
また、『のび太と鉄人兵団』は私も同じようにタイムマシンを最初から使えば解決すると思っていたが、今回の思考実験に刺激され、実際は困難と気づけたことも楽しかった。