法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『NHKスペシャル』狂気の戦場 ペリリュー〜"忘れられた島"の記録〜

太平洋に浮かぶペリリュー島。飛行場があったため軍事拠点として重要視された小さな島での持久戦を、米海兵隊の記録映像と両軍兵士の証言でつづる。
NHKスペシャル

日本軍はアッツ島以降続けてきた組織的な“玉砕”を初めて禁じ、持久戦を命令。米軍が当初「3日以内で終わる」と予想した戦闘は2カ月半に及んだ。

再放送の録画を視聴。本放送では22時から放映されたはずだが、ボカシをかけつつも凄惨な両軍の遺体をはっきり見せる。
もちろん肉体の損壊だけでは終わらず、精神も損傷していった過程を描きだしていく。負傷兵を救おうとする米兵が狙撃されて被害が拡大したり、戦闘意欲を失った半裸の日本兵を米軍が射殺したり、後ろ手でしばられ斬首された日本兵が映ったり。
銃剣で向かってきた日本兵を殺した米兵は、相手の持っていた家族写真を見て後悔にさいなまれる。かと思えば、残虐な行為をはたらいた日本兵への憎悪で、穴にひそんでいたところを迷わず撃ち殺したという証言も出てくる。
そして緑と白の美しい珊瑚礁が、日本軍によって穴だらけにされ、米軍の火炎放射器で燃やされていく。今に残るカラー映像が生々しい。


玉砕禁止の持久戦が日本軍全体の方針転換だったということも明言された。命を大切にするためではなく、負けを引きのばすため最前線に重荷が背負わされたのだ。
『終戦記念特別ドラマ 命ある限り戦え、そして生き抜くんだ』 - 法華狼の日記
同じ戦場をドラマ化した『命ある限り戦え、そして生き抜くんだ』の前に見なくて良かった。もし先に見ていれば、ドラマを見る気にならなかったかもしれない。良くも悪くも中川州男大佐という個人の物語にはなりえない、そういう戦場だったのだ。
さらに制圧にとまどったペリリュー島を迂回してレイテ島へ米軍が侵攻したことも言及される。途中から日米両軍にとって戦略的な価値が低くなっていたわけだ。さらに米海兵隊が単独での制圧にこだわり、陸軍の支援を断ったという逸話も語られる。日本兵だけでなく米兵も命をすりつぶされていたのだ。