法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ネプチューンの超体験!タイムワープ旅行社〜時間旅行で江戸時代へ〜』

日本テレビ系列の「つなげよう、ecoハート。」キャンペーンの一環で放映された2時間半SP番組。江戸時代に時間旅行した未来人の視点で、当時のリサイクル社会を描き出す。
歴史に残らないような過去の風物を再現し、タイムスリップした未来人の視点で描く企画は、NHKの『タイムスクープハンター』を思わせる。しかも同日に裏番組として放映された。エコに関する番組のため古紙再生の話題も登場し、最近に放映した「紙くずリサイクル激情」とかぶっている。資料が共通しているので、当然の話ではあるが。


しかし、ドラマとしての構成は正反対。
『タイムスクープハンター』の未来人は、あくまで視聴者に過去のドラマを伝えるジャーナリストに徹しようとして、自身が事件に巻き込まれても歴史改変を避けることを第一目的にしている。歴史の光と影で現代社会を隠喩し、より良い社会を作り出そうとする名も無き人々を肯定する。
『タイムワープ旅行社』においては、江戸時代の風俗に影響を受けた未来人の側にドラマが生まれる。過去は基本的に思っていたよりは素晴らしい社会として描かれ、暗部はほとんど指摘されない。寿司職人一家の背後で動く策謀で、重要な小道具として狙われるのも、当時の素晴らしい江戸文化だ。
当時の世界で最も人口の多かった都市といった紹介もふくめ、一貫して江戸を素晴らしい社会として賞賛している。リサイクルシステムも江戸末期には破綻していたという説があるが、それが紹介されることはない。ドラマの終盤で要点となった火事の多さすら、破壊消火や復興の素早さを紹介して賛美の材料にする。
昔は良かったという素朴な歴史観に基づいて、未来人家族の再生を描く。そういうドラマとして古めかしい作りは、あまり好みにあわなかった。
比較すると、映像の再現性にかけるこだわりも低い。登場人物の多くが有名タレントであるため、コスプレしているような印象がつきまとう。頭部はもちろんカツラで処理しているし、言葉づかいも現代的。過去の風俗を説明する場面では、多くを資料映像にたよっている。


ただし、全く楽しめなかったわけではない。過去を再現して時間移動するドラマという制約は守り、与えられた環境で作り物くささが出ないように努力している。そして『タイムスクープハンター』とは異なる見所も確かにあった。
『タイムスクープハンター』は低予算を逆手にとった作りではあるが、VFXを多用できない制限が目立つことも確かだ。『タイムワープ旅行社』では江戸の全景や町並み、火災などで適度にVFXや特設のセットを活用し、多くの町民が肩をよせあって生きていた江戸の広さを、映像として描き出していた。
江戸庶民の暮らしだけにこだわった回も『タイムスクープハンター』には意外と前例が少ない。食事や風呂や排泄といった身近な生活がしっかり描かれたのは『タイムワープ旅行社』の良さだ。
名も無き人々を題材にするという制約がないため、ところどころで過去の有名人も登場。その有名人との接触が動機となって、時間移動SFらしいサスペンスも見せる。
予算を投入したSP番組ならではの面白さはあり、意外と2時間超を飽きずに見ることができた。