法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』第14話 地下にひそむ者たち

コンテは石平信司で、作画の弾けていた第5話と同じく池畠博史が演出。作画監督は塚本知代美で、補佐に大城勝がついている。
ある黒幕が姿を現す*1重要な回であり、映像が充実。ほとんど地下を舞台としながら、先の見通せない暗所であることや、下水の流れを活用して画面にリズムを作っている。加えて、人体がしなる荒々しいアクション作画から、賢者の石が変じた液体のていねいな作画まで、アニメーションの楽しみが画面にあふれている。見ているだけで楽しくなる作画回だった。


ただし、物語の展開は良くも悪くも原作通り。激しいアクションが楽しめた一方、描写としてはグリードが弱く感じられすぎる。
「最強の盾」たるグリードは、前アニメでは1クール近く暗躍を続け、弱点を突かれ弱体化した状態で主人公と激しい一騎打ちをくりひろげ、ようやく倒された。殺人を忌避する主人公に、人に近い存在を明確に殺させるという、罪を負わせる役割だった。そして、独自の信念から作中最大の敵へ反旗をひるがえすという、物語上でも強さのある存在だった。
しかし原作のグリードは、「父」が登場する前振りという役割で、アクションが多いわりに強さを感じさせない。せいぜい数話にわたって登場するなりの強さはあるが、展開を圧縮している今回のアニメでは消え失せている。
この展開速度なら、前回で主人公を最終的にグリードの技量が凌駕し、師匠と二人がかりでようやく互角へ持ち込めるように物語を改変した方がグリードの印象が増して、応じる「父」の強大さも増したのではないかと思う。

*1:つまり前アニメとの分岐点ともなる。