折り返しとなる今回は、期待通りの傑作。
シロップの葛藤も描け、結果として信頼した主人公の存在も浮かび上がってくる。
プリズムチェーンを活用して敵地に乗り込むなど、アクションのトンチも効いていた。
情熱が先走って安定性がやや欠けている*1大塚隆史と対照的に、戦闘中でも適度に息抜きの表情を入れる*2松本理恵演出が安定した面白さを生んでいる。たとえば、ナッツハウスから出て行くシロップを美々野くるみがなじる場面。くるみは画面端に小さく配置され、デフォルメされた楽しい動きをしつつ、全体のバランスを壊していない。こうした新人らしからぬ細やかな計算が全編にいきわたっている。まるで投身自殺のように時計塔から飛び降りて変身するシロップ等、小技も効いていた。
作画監督は青山充。一人原画ではなく、林祐美とフィリピンスタッフも原画に入っている。これもまた激しい動きながら整った作画修正が行きとどいていた。
*1:もちろん、その歪さは一種の魅力でもある。
*2:たとえば大塚隆史は初演出した『ふたりはプリキュア Max Heart』で、敵怪物を完全なギャグキャラとして演出したことがある。戦闘の息抜きを超え、怪物に親しみすら感じさせた。しかし結局は通常通り雑魚怪物にすぎない脚本であり、親しみ描写は全体の構成からすると不要だった感がある。