魔法的ルールを導入した本格ミステリ。
連続殺人ミステリにおける１パターンに魔法を導入することで新味を出したのが特徴か。簡単ながら謎解き自体も悪くなく、偽の解決編を序盤に出して楽しませることも忘れず、いくつかのパーツがきちんとはまっていくカタルシスが充分にある。容疑者の数が少ないが、中盤からホワイダニット*1に移行していくので、よほど犯人当てを求めなければ楽しめるだろう。
ただ、保健室の双眼鏡に伏線が無かったり、クライマックスで格闘にたける人間が多いことが唐突に明かされたり、少し工夫すれば良くなる残念な部分がいくつも。最初の殺人で心理的な説得力が一押し足りない点も気になった。
全ての悪人に同情できる来歴を用意することで、文字どおり悪魔的な結末を際立たせる技巧はいい。悪魔の少女をめぐる視覚的な効果も悪くない。
ちょっと問題なのがヒロインの人物像が書き込まれていないため、主人公の行動にライトノベル的な説得力が薄いこと。推理小説的には許容範囲なのだが。
*1:犯行やそれに付随する奇妙な行動を取った動機や原因を、謎解きの中心にすえるミステリの分類。
