法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season19』第3話 目利き

大規模な詐欺事件を追いかけていた刑事が死体となって見つかる。そこは数年前に詐欺グループから警察に協力しようとした男が殺された場所だった。
死体となった刑事は、なぜか実演販売の高価な洗剤を購入していた。それを売った酒井という男が、かつて詐欺をはたらいて服役していたことに特命係は気づくが……


『相棒 Season9』の傑作エピソード「ボーダーライン」で事実上の主演をつとめた山本浩司が、今回は怪しい実演販売員として登場。言葉たくみに商品を売りこむ、善悪さだまらない難しいキャラクターを演じる。
物語もよくできていた。社会派らしい雰囲気の人情的ドラマでいて、かなり複雑な展開で人間の行き違いを描いて、そこそこ意外でやるせない真相を提示した。


まず、実演販売の講演を特殊詐欺の現場と重ねあわせつつ、売られている洗剤を高価だが高性能と描写して、酒井の立場を最後まで確定させない。さらに死亡した刑事をめぐる2課の仲間意識にしては不思議な行動を、詐欺グループと内通している可能性で、被害者の立場も不明確にする。
細部の推理にも光るものがあって、実演販売の商品はついでに買うものであってわざわざ買いに行くものではないという指摘や、尾行と思われた監視カメラ上の行動は人間ではなく公衆電話を探していたという推理は、シンプルだからこそ感心できた。実演販売が今どき商売として成立するのかという疑問も、終盤で詐欺にかかわった原因のひとつとして語られて納得感があった。
トリックに必要な道具類も、印象的な商品アメイジングウォッシュだけでなく、講演のあとかたづけをする場面で地味に印象に残るように描写していた。真相が描かれた場面で、その道具がどこに出ていたのかすぐ思い出すことができた。
スタッフクレジットが流れ出してから小さなツイストを入れたり、少しでも複雑さを増そうとする話運びの努力も好ましい。冒頭の事件も本編とちゃんと関連していたり、今回は話に無駄がなかった*1

*1:ただ今シーズンから入った1課初の女性刑事や、前シーズンから入った女将はまだキャラクターが弱くて存在意義がまだよくわからないが。