「バイアス」が一般的に悪いものだという合意すら今のインターネットでは難しいのだろうか - 法華狼の日記
全ての表現に意図が必要という考えは、創作のひとつの理想論としては理解できる。
ジェンダーバイアスそのものが不文律として一種の制約をもたらしていると考えれば、ガイドラインは表現の規制を破る道具になるかもしれない。
注目を集めている上記エントリの文脈で、どうしても紹介したくなった作品がひとつある。
すでに一部では充分に有名だが、いろいろな意味で他人への紹介を一瞬ためらわせる作品ではあり、ゆえに表現への制約を外そうという意見が集まっている現在が良い機会だと思いたい。
あらかじめ断わっておくと、それは既存のアニメキャラクターを立体化した二次創作フィギュアのひとつだ。きわめて強い性的表現でもあり、嫌悪感をもたれる恐れも多分にある。
公式や商業という制約を離れたアマチュア作品であり、おそらくリビドーとテクニックのみで制作されながら、その圧倒的な熱量と技巧をもって逸脱した造形物。
既存のジェンダー観を否定せずに欲望のまま抽出して結晶化することで、むしろ既知への疑いと驚きすらおぼえさせる美術品。
そんな作品がはてなダイアリー*1に、込められた熱量に比してそっけなく掲載されている。
ペーパークラフト式波アスカラングレー - sansogyorai00の日記
よく写真を見ればわかるように、この造形物は紙だけでつくられた等身大ドールで、あらゆる必要に応じて可動する。そのため既存の縛りを意識して破っていることが作者の説明文で明記されている。
最後にもう一つ説明します
倫理的縛りが有る
メーカーの製品とは異なり
私のアスカは 女性を模した
等身大フィギュアに求められる
あらゆる用途に対応可能な構造で出来てます
たぶん芸術品であれば現在の潮流を参照しつつ新しいコンセプトを提示するところだろうし、商業品であれば目的を理解してなお過剰な機能は量産化において削ぎ落されるだろう。使用目的からすると、実物大ボトムズ*2などと違って、二次創作としても認められづらいだろう。
しかしそれで消化しがたい作品かというと、美少女として完成されたキャラクターデザインを参照することで、このようなアートとしては愛好しやすいビジュアルになっている。もしヘンリー・ダーガーの手元にも模写することを前提として設計された現代のアニメキャラ設定があれば、どうだったろうか。
- 作者: ジョン・M.マグレガー,John M. MacGregor,小出由紀子
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2000/05/01
- メディア: 大型本
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いずれにせよ、おそらく編集にあたる役割が制作フローに存在していれば、このようなかたちでは完成しなかったろう。そういう作家がまれによくいることはまぎれもない事実だ。
そういう観点から何らかの機会に紹介しておきたかったわけだが、冒頭で言及した文脈の関係で、この話題はもう少しつづく予定。