法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

GYAO!で『ガサラキ』が無料配信開始していたので、西田啓というキャラクターについてちょっと

週3話ずつ更新で、今は第6話まで一気に見られる。当時のサンライズでトップクラスのメカ作画が見どころのひとつ。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00066/v13175/
今となっては、現在はコンテマンとして有名な寺岡巌が、キャラとメカを同じ話数で作画監督しているところが楽しい。当時は絵柄の癖が強いため不評はあったが、独特の書き込みの多さと元気な動きが魅力的。


良くも悪くも人気の国学者西田啓が登場するのは第8話から。狂気に満ちた国粋主義者だが、自己評価の異常な低さが自己愛に反転しない。自傷しつつ他者評価を高くする性格として、かなり珍しい人物造形になっている。
他者を評価することから承認欲求に飢えた人々を味方につけていくまでは、政治的な方便として珍しくない。対立する思想に価値を見いだすことも、政治家の器の大きさを表現する定石だ。しかしクーデターを主導した思想家が、それに反対する大衆を当然の行動だととらえて批判しないのは、このたぐいの物語では滅多に見ない。
また、自己評価が低いことで、出発点こそ憂国思想でも、ラディカルに自分自身を懐疑して思索を深めていく。方便のために他者を評価してみせるのではない。モデルとなった北一輝も右翼思想家でありながら反天皇制的な側面もあったというが、同じく226事件関係でいえば自分たちを認めない天皇を呪うようになった磯部浅一のようでもある。そうして一見してぶれのある思想の果てに、国境を超えていき、興味深い境地へ達していった。


もし他のアニメで最も近い人物をあげるなら、『新機動戦記ガンダムW』のトレーズ・クシュリナーダだろうか。
敗者になることを望んだ超越者であるがゆえ、結果として西田と同じく他者評価が高いキャラクターだった。トレーズは敗者となることを望み、西田は坂道を堂々と下りることを目指した。同じく敵として主人公の前に現れたが、最終回よりも前に自らの意思で退場した。
両作品はスタッフのむすびつきも強い。制作会社が同じサンライズで、キャラクターデザインも村瀬修功であったし、池田成監督は高橋良輔作品で演出家としてキャリアを重ねていた。