法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』カニ食べたい!/時代を超えてお買い物

アニメオリジナルの前半と、ほぼ原作に忠実な後半と。


Aパートは、噴きかけた対象の外見だけが変わる秘密道具「モドキスプレー」が登場。ちょっとしたミスでカニの姿になったことから、ジャイアンに食べられないよう逃げまどうサスペンスに移行するのだが、単純に秘密道具を色々な対象へ吹きかけるエピソードでも面白かったかもしれない。
ビジュアルに反した動作をさせるという機能は、原作に登場する「無生物催眠メガホン」の鏡像といえる。ドラ焼きに鉛筆をつっこむと削れるという映像など、記号的表現で違和感を強調する『ドラえもん』らしい描写だった。
それでいて、リアルなタラバガニへ変化したビジュアルの面白さは、あまり原作では見かけないもの。カニ視点らしい低いカメラ位置や、ライオンが家の陰から現れる場面のレイアウトや間など、演出全般も良かった。原作の雰囲気を再現した物語で、アニメ独自の映像を見せる。アニメオリジナル回として理想的といっていい。
また、カニ化したドラえもんたちだけでなく、逃げ出したライオンにしずちゃんが食べられそうになってしまう。こうした人を食ったブラックな描写も、原作の雰囲気をよく再現している。カニだけにカニバリズムな展開……ってやかましいわ!


Bパートは、異なる時代の商品を購入できる自動販売機が登場。物価の低い時代から買うことで、安価に商品を入手できる。
ほぼ忠実にアニメ化しているのだが、煙草を買うように父親からたのまれる描写は、コーラを買うようにたのまれる描写へ改変。これは現代ではしかたない改変だろう。
また、過去の菓子に対して「素朴」という評価がされたり、携帯ゲームとしてピンボールゲームが出てきたり、全体的に商品や反応のディテールが細かい。前後するが、ベスト版カメラの挙動をしっかりアニメで動かしていた。過去の物というリアリティが描けている。
そして、昔の遊びを楽しむようになるクラスメイトを通して、ノスタルジーを明確に描いていく。これは今回のアニメ独自の味付け。展開を崩さない程度にとどめており、問題なく楽しめた。