法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』の原典と二次創作を混同したライフハック記事騒動

二次創作の設定を前提として、『ドラえもん』から教訓を引き出すエントリが話題になっていた。
のび太を成長させたドラえもん式教育法 - sadadadの読書日記

子供の頃、ドラえもんを見ていて不思議に思ったことがあります。なぜ、頭が良くない怠け者なのび太が、ドラえもんを作ることができたのかということです。ドラえもんに頼るばかりで自分では何もせず、毎日をダラダラと過ごすのび太が生まれ変わるターニングポイントはどこにあったのでしょうか。今更ながら、思い起こして見直してみると、ドラえもんが行っていたことは、まさに伸ばす『教育』の原点だったのだと思います。

もちろん、のび太ドラえもんを作ったという設定は二次創作でしかないという批判も多くあびた。
はてなブックマーク - のび太を成長させたドラえもん式教育法 - sadadadの読書日記
コメント欄などでも誤りを批判され、現在は下記のように冒頭が書きかえられている。

子供の頃、ドラえもんを見ていて不思議に思ったことがあります。なぜ、ドラえもんが頭が良くない怠け者なのび太を、成長させることが出来たのかです。ドラえもんに頼るばかりで自分では何もせず、毎日をダラダラと過ごすのび太が生まれ変わるターニングポイントはどこにあったのでしょうか。

さらに、このエントリは二重三重の盗作か、複雑な背景をもった使い回しという可能性も指摘もされていた。
「のび太がドラえもんを開発した」なんて勘違いは瑣末な問題であった件 - 最終防衛ライン3

参照元がプライベートモードなのにどうやって参照してるのか


すでに根本的な批判は出つくしているが、いくつか指摘されていない部分も拾っておく。

藤子不二雄先生が、ドラえもんを通じて語らせた心に響く言葉はのび太の心だけでなく私達の心も動かしてくれます。

☆ 心に響くドラえもんの言葉10選
1.「意地悪されるたびに 親切にしてやったら どうだろう」
2.「他人にできて、君だけに できないなんてこと あるもんか」
3.「いっぺんでいいから 本気で悩んでみろ」
4.「毎日の 小さな積み重ねが 歴史を作っていくんだよ」
5.「人にばかり頼っていては いつまでたっても 一人前になれないぞ」
6.「どっちも自分が正しいと思っているよ 戦争なんてそんなものだよ」
7.「ほんとのファンなら 落ち目のときこそ応援しなくちゃ」
8.「過ぎ去った時間は もう二度と帰ってはこないんだ」
9.「悩んでいるなら 一つでもやりなよ」
10.「何にもしないで いきなり偉くなれると思うのかい」

(抜粋 ドラことば 心に響くドラえもん名言集)

たとえば7番目の台詞は、ドラえもんではなく、のび太が特撮番組『宇宙ターザン』を擁護した時の言葉だ。
いっしょにTVを見ていたドラえもんは、だんだん質が悪くなっていく作品に対して、次からは他の番組を見ようといいだす。かつて夢中になっていたクラスメイトたちも、すでに興味をなくしてしまっていた。そこで、のび太は自分だけは愛着を持ちつづけるんだとつぶやく。
のび太の協力で番組は持ち直し、再び高い視聴率をえるようになった。飽きていたクラスメイトも、再び話題にのぼらせるようになる。のび太は、宇宙ターザンごっこ遊びで悪役がわりふられても、皆が作品を楽しんでくれていることに喜ぶ。あくまでドラえもんは補佐するだけ終わり、のび太自身の信念でハッピーエンドにいたる、珍しい回なのだ。
おそらく、どこかで『ドラえもん』という作品の名言として引用されていたのを、ドラえもんというキャラクターの名言と勘違いし、利用してしまったのだろう。


また批判している側にも、間違いが散見される。注目を集めているtkfire氏のエントリを例示しよう。
のび太がドラえもんをつくれるほどの博士になれた理由について一言。 : Blogで本を紹介しちゃいます。

本家のドラえもんには連載初期に一度、最終回が書かれている。それは、未来の時間旅行が過去に悪影響を与えるという理由で、未来で時間旅行が禁止されるというストーリーだ。(※これは、藤子・F・不二雄大全集に載っている)その後、連載が再開されて有名な「帰ってきたドラえもん」になるわけだ。

ドラえもん』は小学館学年誌で並行して連載されており、それぞれ別個の最終回を迎えた。時間旅行の禁止は最終回のひとつ。
てんとう虫コミックスに収録されたのは「さようならドラえもん」だが、ドラえもんが未来へ帰る理由ははっきり語られていない。この「さようならドラえもん」から連続した物語として書かれ*1てんとう虫コミックスに収録されたのが「帰ってきたドラえもん」だ。

実は、のび太の将来に関しても複数のパターン用意されている。1つ目が原作1巻「未来の国からはるばると」に収録されている物語。

そして、世間一般的に知られているのが、しずかちゃんと結婚するというハッピーエンド。

ドラえもんが来たことによって時間が改変され、後者のハッピーエンドになったというのが、原作での説明。原作連載が進んだ後でも、ジャイ子が本来の結婚相手と意識した回がある。最終回が複数あるという話とは、意味あいが違う。

*1:つまり、そもそも最終回ではない。