法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season11』第11話 アリス

元日に放映された2時間超のスペシャル。半世紀以上前の少女失踪をめぐる謎に、相棒がいどむ。脚本は太田愛
「宝物」の隠し場所が暗号や機械トリックで登場することなどをふくめて、時代がかった古き良き探偵小説を見ているような気分になれた。


昭和30年に旧華族がおとずれる高級ホテルという導入には、いきなり年代設定として無理があると感じたが、さすがに中盤で説明がつけられた。他、こまごまとひっかかっていた部分も、ほぼ全てが説明された。
さらにこの作品らしく、警察庁発足時の暗部が問われ、その事情をしるした文書が争奪対象になる。しかし、その展開自体がミスディレクションとして作用し、どんでん返しを盛り上げた。


少し驚いたのは、物語の結末と、消えた少女の心理。
半世紀前のスキャンダルでそれほど世論が動くかという疑問を、途中まで感じていた。昨今の日本社会を見ていると、沖縄返還密約等で政府が秘密にしていたことは報道機関こそ注目しても、過去の関係者や政府機関にさかのぼって責任が問われたりはしなかった。東日本大震災にまつわるさまざまな問題も、いっときは報道で注目を集めても、継続して問われたりはしない。
しかし、この物語は最後に、さまざまな立場の者が罪を隠して生きていたことをあばく。真実をあばこうとした少女すら、その信念をつらぬくことができず、折れてしまっていた。少女のまま社会から消えることは、結果的にせよ数少ない抵抗手段だったのだ。そして子供から大人へと成長し、必要悪として目をそらすことの残酷さを描き出した。
罪から目をそむけた人々の矮小な姿は、警察内部にとどまらず社会全体を風刺しているのだろう。そして、その罪をあばこうとする主人公の矛先が、過去作品と比べて弱く感じられたことに、『相棒』もまた現代社会の空気から逃れられないのだと思わずにいられなかった。


あと、ひとつだけ。久三の結末は、さすがに警察や周囲の人間が注意して、助けるべきだったんじゃないかな。ある意味で、最近の事件を思い出すリアルさではあったのだが。