法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

熊森協会だけが特別に批判されるべきと思えないのだが

あまり熊森協会関係の議論は真面目に追っていないのだが、TV朝日の『報道ステーション』が好意的に報じていたというのだから、実際のところ問題視しない人が多いのではないか。
|ニュース詳細|報道ステーション|テレビ朝日

クマの出没が相次ぐなか、餌不足に苦しむクマを助けようと、NPO法人日本熊森協会」が所有する富山県上市町の山林に約1トンのドングリがヘリコプターからまかれた。日本熊森協会では今年、西日本を中心にドングリをまいているが、ヘリコプターを使うのは初めて。日本熊森協会の中本菜々さんは「全国から集めてもらったドングリをあげることで、クマたちが山の奥で静かに暮らすことができるし、人間にとっても安心して暮らせる」と話している。

つまるところ、野生動物への餌付けに問題性があるという考えが共通理解されてないだけではないのか。猿に餌をやっては駄目だという報道や、その結果として猿が人の餌を狙うという報道は単発的に存在しても、たとえば日常風景で野鳥に餌をやったりする姿は好意的に報じられるだけで慎重さを注意されることはない。
あえて同じテレビ朝日でいうと、水曜日に放映されているバラエティ番組『ナニコレ珍百景』において、多量の野良猫や野生動物へ餌をやる映像を、ほほえましい光景であるかのように紹介することがあり、違和感をおぼえたりもする。全体的には良い番組だと思っているのだが、紹介する光景に対して踏み込んだ評価を行わない*1という「中立」的な態度の危険性を制作者が自覚しているのか疑問だ。
http://wws.tv-asahi.co.jp/nanikore/contents_pre/collection/081126.html

「猫に大人気のおばあちゃん」宮城県石巻市田代島


能動的な餌付けでなくても、農業等で果樹や野菜を集中させれば、それらを食糧とする野生動物を結果的に引き寄せていることは、田舎に住んでいる身として実感している。食糧が満たされた野生動物は増えるので、人間と接触する可能性が高まることもある。
たとえ人間から遠く離れた場所で餌を与えても、同じ食糧を別の動物が食べたりすることで人間の望まない方向へ生態系が変化したりする。熊森協会の行動は、熊が食べる前にドングリを餌とする害虫が寄ってきて、大増殖したりすれば逆に熊の食糧が減る結果にだって繋がりかねない、というのが単純な想像としてある。


実際は無力どころか逆効果であっても、具体的に何かをしていれば善行であるかのように自分を納得させられる。自身の無力さに具体的な理由をつけようとして、強大な黒幕を妄想してしまう陰謀論者と発想の根底が同じ。何か具体的にしている姿が映像として使えるのだから、優先して映像で報道されることも自然。
具体的に何かをしたいという気持ちには応えたいとしよう。そこで少なくとも逆効果にはならない方策として、啓発運動を行うという選択肢もある。だからホワイトバンド千羽鶴といった運動には、啓発それ自体とはまた別の効能もあるのだ。むろん啓発だけで終わってしまう危険性など、実践において賛否はあるだろうが。
熊森協会も、とりあえず熊の折り紙でも折ってみたらどうだろうと思う。紙がもったいないなら不要なチラシでも使えばいい。
http://w01.tp1.jp/~a150296341/02/02-4.03.html
ちなみに、もっと真面目に生物多様性のため活動している会議「COP10」でも折り紙を用いた啓発運動を行っていたりする。
想いでつなごう!おりがみアクション

*1:司会者が自虐的に指摘したりする。