法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ドクロ島の秘宝

大野木寛脚本、鈴木孝義コンテ演出、嶋津郁雄作画監督といういつもの面々。内容が宝探しというところも新鮮さが全く感じられないので、注目はいかに細部で工夫していくかにある。


説明なしにRPGファンタジーな世界観で冒険している姿を描き、実は冒険ゲームブックで遊んでいたというつかみはまずまず。ジャイアン達だけでなく出木杉も登場したところは原作の冒険ゲームブックを思わせる。
そして本物の宝探しを始めるわけだが、瀬戸内海のドクロ島についた皆は、ドラえもんのび太・しずかと出木杉ジャイアンスネ夫というチームに別れて競争することになる。原作の冒険ゲームブックでものび太出木杉が競争していたが、こちらはドラえもんと対抗できるキャラクターを用意して緊張感を高めるため出木杉が登場したといったところ。そういえば、大長編『のび太の宇宙小戦争』の自主制作映画競争と同じチーム構成だ。
宝のある場所へたどりつくまで島を散策するのだが、色とりどりな草花の美しさ、山の斜面に作られた段々畑、点在する石仏といった細かい描写で雰囲気が出ているところが目を引く。架空の島なりの存在感が表現されている。どこかでロケしたのかと思ったほど。
洞窟での宝探しの謎解きは子供向けの暗号なので、なぞなぞ程度。冒険する舞台の洞窟も明るくて照明いらず、罠は作動するものの矢じりは吸盤で危険性なし。海賊の骸骨が残されているかと思えば、ジャイアンが手を合わせて「むこう向いててください」と、頭の方向を無理やりに変えるブラックなギャグで軽くすます。当然のように宝箱*1に中身は残ってなく、島起こしのアトラクションだったというオチ。……出木杉スネ夫くらいは途中で気づくべきだったろう。
ただ、本物の宝がかつて存在し、その宝が島の社会を育てたという真相に説得力があったことは良かった。宝として島の風景が提示されるが、先述したように散策時の細かい描写で存在感が出ているため、ベタベタなオチながら映像として納得できるようになっている。特別に良い出来とは思わないが、娯楽として放送時間内いっぱい楽しむことはできた。

*1:どの角度から力をこめて引っぱっても開かず、スライドさせて開けるというベタなギャグは間が良くて笑えた。