法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

11月2日にて勝訴確定

在外被爆者訴訟で、原告側の勝訴が確定した。強制連行への賠償が認められない*1などの不満は原告側にあるだろうが、ともかく司法はそれなりの判断を示した。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20071102/20071102_001.shtml

 太平洋戦争中に朝鮮半島から広島市の旧三菱重工業の工場に強制的に連行され、被爆した韓国人元徴用工40人が国などに計4億4000万円の損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷は1日、国の上告を棄却した。在外被爆者への手当支給を認めなかった通達を違法とし、4800万円の国家賠償を命じた二審判決が確定した。

 援護行政をめぐる被爆者の訴訟で国家賠償が確定したのは初めて。行政通達の違法性を認め、賠償を命じる司法判断としても初の確定となった。

 涌井紀夫裁判長は「国の担当者は通達を出した時点で、正当な解釈かどうかを検討する注意義務を怠り見過ごした。原告は被爆による特異な健康被害に苦しみ、不安を抱えながらの生活を余儀なくされた」と判断した。

 裁判官3人の多数意見。甲斐中辰夫裁判官は「通達は違法だが、行政側の解釈にも一定の根拠があり、注意義務違反はない」と反対意見を述べた。旧厚生省出身の横尾和子裁判官は被爆者担当部局に以前在籍したため、審理に加わらなかった。

 問題となったのは「出国すれば法に基づく健康管理手当を打ち切る」とした1974年の旧厚生省局長通達(402号通達)で、最高裁は今年2月、ブラジル在住被爆者による同種訴訟で通達を違法と認定していた。

 涌井裁判長は「国家賠償は国の担当者が注意義務に違反し、違法性を見過ごした場合などに限られる」と指摘。その上で、不法入国した韓国人被爆者への手当支給を認めた74年3月の福岡地裁判決後、担当者は海外在住者に手当を打ち切る措置の違法性を認識でき、その後の通達の問題点も見過ごしたと判断した。

 判決によると、原告らは44年、国民徴用令により旧三菱重工工場に連行され、翌年8月被爆。帰国後、長年援護を受けられなかった。

 原告側は「通達は違法な差別」と主張。広島地裁は原告の請求を棄却したが、2005年の高裁判決は通達を違法とし、原告が精神的損害を受けたとして、慰謝料など1人当たり120万円の賠償を命じた。

 原告は強制連行による賠償も求めたが、判決は個人請求権を消滅させた1965年の日韓請求権協定を理由に退けた。

=2007/11/02付 西日本新聞朝刊=

三権を比較すれば司法が最もまとも、という話*2も思い出した。

*1:判例通りではあるのだが。

*2:少なくとも大塚英志氏が一般論として、憲法関係で語っていたと記憶している。