法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』ハラハラ ドキドキが待っている!? 危険な旅 2時間スペシャル

「危険なお仕事 ベナン編」は、西アフリカのベナン共和国で、未舗装の悪路を大型車両でつきすすむ男たちを紹介。
 古びた巨大コンテナ車で運ぶ風景はオーソドックスなドキュメンタリ。積んでいるのが綿花というところは珍しいが、この種のドキュメンタリとしての意外性は少ない。
 悪路といっても平野なので、人命がおびやかされるほどの事故にはならない。ポンプが故障しているためガソリンを運転席脇のポリタンクに入れて自由落下でエンジンに供給するような場面もあるが、全体的に牧歌的な雰囲気。
 どちらかといえば、取材対象の運転手が堂々と第二夫人や第三夫人を登場させるような文化が興味深かった。カメラの前の第三夫人のがめつい態度から、カメラがいないところではもっとすごいだろうという推測がスタジオで出てきたところが、カメラの存在を意識した珍しい意見として印象深い。
 スタジオの感想では、詰まりを直すためホースを口で吸ってガソリンが口からあふれる描写が「地獄絵図」と驚かれていたことも印象的だった。燃料のくみあげでは日本でもおこなわれていたのだが、それが忘れられた時代の変化が興味深い。スタジオでも所ジョージあたりは知っていると思うが、あくまで故障を直したほうが結果的に安くつくのにと論評するにとどめていた。ちなみに検索すると、まだ日本でもやっている人は少数いる模様。


アメリ国境警備隊」は、今回はメキシコとつなぐ橋の税関を紹介。今回は薬物関係の描写が多め。
 バス全体をX線で検査して燃料タンクの異物を発見して、ガソリンを抜き取って検査したら、密輸が成功するかのテストのため小麦粉を入れていただけなので、もともと無関係らしい運転手は無罪放免にされたり。
 白く固まったココナツオイルを入れた巨大な缶にメタンフェタミンの結晶を隠していた事件では、缶ひとつひとつを検査しなくてはいけないため深夜まで仕事がつづく。しかし時間がたってオイルが溶けてきて、結晶がすぐ発見できるようになった……オイルが溶けるまで別の仕事をしていたほうが良かったのでは。
 なかには冤罪もあって、赤い液体を透明なボトルに入れて運んでいた女性は、説明どおりに占いに使うようなパラフィンオイルだったという。


「絶体絶命 『危機一髪!ヘリで脱出』」は、2003年に大西洋でエンジンが停止してしまい、そこに嵐が直撃したフィンランドの貨物船カミラ号の乗組員を、カナダ軍のヘリコプターが救出した出来事を紹介。
 乗組員は16名。もともと7000隻が沈没するような危険な海域で、夜になれば人命が失われることが確実視されていた。しかも激しい嵐のため軍のヘリコプターで救出するしかないが、航続距離が足りない。
 そのため少し遠回りして海底油田基地にたちよって燃料補給する計画をたてる。ひとりにかけられる時間は数分だが、ぎりぎり全員を救助できるはず。
 しかし、その基地の機器に問題が起きて燃料補給できないという。そこでさらに少し遠い油田基地で燃料補給するよう変更したが、その基地は海底に固定されていない浮遊タイプのため嵐の離発着は困難。
 それでも燃料補給に成功し、貨物船上にホバリングして乗組員を救出していくが、残り数人になったところで長期間の悪天候下のホバリングに機体が警告音を出し、ローターの回転速度が落ちる。残り数人を見捨てて安全策をとるか、全員救出のリスクをとるか。
 ここまで来たら全員を助けると決断し、全員をヘリに収容できたが燃料不足による電力不足で計器が次々にスイッチオフ。そこでマニュアル操縦でなんとか帰還に成功した……
 おそらく資料映像と組みあわせて最低限のリソースで迫真の災害再現ドラマを見る楽しさはあった。さまざまな決断と選択が成功していく展開も心地よい。これを映画などの娯楽にするなら、もっと失敗らしい局面をピックアップしたほうがいいとは思うが、そうせずにすむ実話の良さを逆説的に感じた。


「裸のサバイバル メキシコ ユカタン半島編」は、サバイバル愛好家のタトゥーアーティストの男と、子供たちにサバイバルを教えているが自信のない女のコンビ。
 海岸で、まずは日よけの小屋をたてたふたり。女は寝床も快適につくれたが、男は柱をたてるような小屋をつくるために力をつかいはたして寝床は葉っぱをならべただけでアリがたかってくる。
 37℃で喉がかわき、翌日に泥水を蒸留するため木をこすって火をおこそうとした。男は鍋をもちこんでいたので、火があれば蒸留は簡単。しかし疲れるだけで火はおこせず。翌日は紐を棒に巻きつけて火をおこそうとするが、焦げはできたものの紐が切れてしまった。
 火がないのでカニなどは食べられず、生で食べられそうな巻貝で飢えをしのぐ。簡単な濾過装置をつくって水を飲むことはできて、さらに水のきれいな池も見つけたが、そこにはワニがいるため使いづらくなった。その後も落ちているガラスで日光をつかって火をおこそうとしたり、ハゲワシを罠で捕まえようとしたが失敗する。
 しかし女が棒の先をとがらせることを思いついて火おこしに成功。その火を松明にして夜の海岸に行き、夜行性のカニをつかまえることに成功。二匹の茹でガニで飢えを満たす。
 そして体力を回復して21日目の移動と帰還に成功。ビートたけしがツッコミを入れたようにワニを食べれば良かったのでは?みたいなところはありつつ、付け焼刃の知識で男が失敗し、工夫した女が助かる構図がサバイバルリアリティ番組として興味深かった。


「アーニャと魔女裁判」は、魔女への恐怖と魔女裁判の風習があるナイジェリアで、魔女あつかいされた少女たちを助けるデンマークの女性を紹介。
 夫と子供とともにナイジェリアで慈善活動をつづけるアーニャ・ロヴェン。血尿などの病気の原因を少女になすりつける村の人々を説得し、少女を武装した施設で保護する。
 アーニャに連絡をとってきた村長自身も魔女の存在は信じているが、アーニャが治療してくれると考えて少女を助けるよう依頼する心の動きが興味深い。
 村人が一丸となって少女を糾弾するが、なかでもパニックになったように男性陣が攻撃的な言葉を発して、女性陣は相対的に穏健にふるまっている構図も印象的だった。
 検索して女性自身の記事を見つけた。こちらはアーニャの名前をアンジャ・リングレン・ローベンと表記している。
“魔女狩り”被害で保護された瀕死の2歳男児、すっかり健康に | 女性自身
 また魔女裁判という文化に植民地時代の影の可能性を感じていたが、クリスチャントゥデイの記事でアーニャが宣教師と紹介されていることに気づいた。
両親に捨てられた男の子、宣教師の思いやりが救う 1年で驚くべき回復 : 国際 : クリスチャントゥデイ
 ナイジェリアの魔女裁判は問題だし、アーニャの活動自体は大切なものだと思うが、もう少し深掘りして考えるべき社会問題のような気配がある。
 その意味では、魔女とは関係ない証明のためにも病気も治療するべきではというスタジオの意見も重要だと思った。治療に失敗した時の懸念が指摘されて、その意見は後退して終わったものの、医療が提供されて高い確率で治療や緩和ができるようになれば「魔女」への見方が変わってくる可能性は高いと思う。


「ネパールの森の小屋」は、2016年にパラグライダーでヒマラヤ山脈の端から端まで移動しようとして不時着し、助けてくれた現地の子供たちに感謝しようとするフランスの冒険家を紹介。
 タジキスタンからスタートしたジャン=イブ・フレドリクセンは、パキスタンやインドをこえてミャンマーまで行くつもりがネパールで不時着。森のなかで重い病気をもつ母をかかえた4人の幼い子供たちに助けられた。
 そして2019年、子供たちに再会しようとしたジャンはネパールに行き、自分が不時着した場所をさがして子供たちに再会しようとする。仲間とともにバスで移動し、徒歩で山を登ってはパラグライダーで人里をさがして飛行。新たな子供たちと交流し、お礼にバイオリンの演奏を聞かせたりする。
 そしてようやく見つけた子供たちの家だが、誰もいない。待っていると、近所の子供がとおりがかり、ソタンという村にいると教えてもらう。さらに4人の子供の父にも会えて、子供はソタンの学校にかよっていることや、母は亡くなったことを知らされる。
 そしてついに成長した子供たちに再会したジャンは、冒険前につのっていた寄付金で現地のスマートホンや調理器具を購入し、子供たちにプレゼント。ポーターを雇ってトタン板などを運んでもらい、子供たちの家を修繕する。最後に重い荷物のひとつとして持っていたバイオリンも贈った。
 無垢な善行に感謝を返すドキュメンタリとして見ごたえがあったが、子供以外に出てくる人々も善良に感じられただけに、もっと広範囲で継続的なプロジェクトができないものかと感じた。もちろん一冒険家に無理な注文とはわかっているし、このドキュメンタリ自体が逆にネパールを知ってそうしたプロジェクトにつながる可能性を助けそうだとは思うが。