法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第39話 しょんな〜!プリキュアの敵はいちご坂!?/第40話 レッツ・ラ・おきがえ!スイーツキャッスルできあがり!

苺山に妖精たちとプリキュアが集まり、ノワールへの対策会議が始まる。そこを襲ってきた敵幹部グレイブは、苺坂の住人を操っているため、プリキュアは本気を出せない……
そこで復活したピカリオだが、その戦闘力は先代プリキュアの力を借りているだけ。そこでピカリオとビブリーが時間を稼いで、プリキュアがキラキラルを作ることに……


グレイブとの決戦をとおして、敵幹部の設定を説明するストーリーと、プリキュアが共同体とともに立ち上がるドラマが、前後編でじっくり描かれた。脚本は田中仁シリーズ構成。
その戦いの特別さを描くにあたって、これまで関係をもった街の住人が敵になるというシチュエーションからうまい。ゾンビ映画のように、見慣れた平和な風景と住人が敵になるシンプルな恐ろしさがある。妖精が怪物化して襲ってきていた1クール目を、人間側から反転した構図から、妖精の贖罪を第40話で描くこともできた。
一方、単発コメディ回にすぎないと思っていた第34話*1から、猫が再登場して妖精に協力する展開もいい。物語の連続性がより強くなり、街の住人は人間だけではないという広い視野が生まれた。
そうして住人まで戦いに巻きこまれたからこそ、プリキュアに浄化された後は一気に仲間が増えて*2、傲慢なグレイブが孤立する結末を強調もできた。


第39話の結末で華々しく復活したピカリオは、あくまでビブリーと同じくプリキュアを支える立場。主人公を超えて悪目立ちすることがなく、仲間になりながら性格がさまがわりすることもない。敵幹部が仲間になって人格が変わりすぎるよりは、いい顛末だと思う。
それでいて、今回のピカリオはついに少年がプリキュアと同じ場所に立ったという感慨もあった。借り物ではあるが、それを自覚的に物語に組みこんでいるので、戦闘力だけでなく人格でもプリキュアに近づけた構図になっている。


ただ映像面では、スペシャルな前後編というには、少し弱かった感もある。
演出は悪くなかった。紅優コンテの第39話と畑野森生演出の第40話で、頭身まで異なる多くのキャラクターを画面に無理なく同居させ、アクションでも良い殺陣はあった。馬飛びのようにキュアホイップが敵をさけるカットなどは気に行った。
しかし作画監督が、可愛い稲上晃から癖の強い河野宏之という流れが厳しい。特に後者はいつもの原画3人ではなく、別に3人もクレジットされ、クライマックスの新必殺技バンクで作画の統一感が損なわれていた。バンク作画の描きこみが粗目で、演出としてもこれまでの必殺技に服装変化を加えただけで、特別な原画ならではの凄さを感じなかったのも難。第40話は、決戦だからこそ特別な荒々しさを出すべきで、いっそ普段より癖を強調しても良かったのでは。

*1:『キラキラ☆プリキュアアラモード』第34話 小さな大決闘!ねこゆかりVS妖精キラリン! - 法華狼の日記

*2:1クール近く残して人間がプリキュアを知ったことは、今後どう展開するのか不安であり、楽しみでもある。