大学構内から白骨死体がほりかえされた。どうやら半世紀前の学生運動で注目され、行方不明になっていた青年幹部らしい。内ゲバと判断されるが、杉下は対立組織を粛正したなら当時は宣伝したはずだと指摘する……
Season19第11話*1などの瀧本智行による脚本。白骨死体となった幹部が女性に性的関係を強要したと語られた時点で想像したとおり、学生運動の正否というより*2、閉鎖的な社会運動の問題を描く物語だった。
実際に当時の学生運動内部ではセクシズムが蔓延していたそうだが*3、現在のさまざまな社会運動内でもセクシャルハラスメントが発覚することは少なくない*4。それは声の大きなカリスマを待望し、そしてそれらしい人物の専横を許して罪に目をつぶってしまう人々の問題でもある。途中に登場した別の元学生運動の闘士をつかって、そういう閉鎖的集団の問題を批判する物語にもできたろう。
しかし、すべては白骨死体の逆恨みのような呪いの物語として終わった。半世紀前の性暴力が、現在にいたるまで多くの人間を苦しめる恐怖。これはこれでホラー調の演出ともども印象深かった。
ミステリとしては、人間関係が語られた時点で真相は見えすいている。学生運動とは無関係な友人関係があって、社会的に成功した男と人形劇をつづけている男女がいて、その女性はシングルマザーで父親不明の息子がひとりいる……と説明された時点で、その息子は幹部が無理やり女性をおそったため生まれたことは誰もが予想できる。
成功者と人形男がひんぱんに携帯電話でやりとりするリストでひとつだけショートメールという手がかりのさりげなさは良かったが、それ以外は息子の現在いる場所が語られただけで事件における役割りもすべて予想できてしまった。