世界には同じ顔の人間が三人いるという。その三人が出会うと、一人だけが力を吸収して生き残り、弱い二人は不運により命を落とす。その仕組みを、ドッペルゲンガーならぬドッペルライナーシステムと呼ぶ。そして力を吸収されるはずの少年は、ひとりの少女と出会って力を共有することで不運を防げるようになり、協力して陰謀劇にたちむかうことに……
2009年に半年にわたって放送された全23話のTVアニメ。原作は韓国出身の林達永と朴晟佑がヤングガンガンで連載していた現代異能アクション。小林常夫監督とサンライズ制作というスタッフ構成も珍しかった。
映像ソフトで鑑賞する機会があり、リアルタイム以来にひさびさに視聴したが*1、やはり現在から見てもキャラクター作画の安定性は突出している。現代異能アクションとしては破格ではないだろうか。
どうしてそれが可能だったかというと、仕事が速くて上手い西村博之がキャラクターデザインと総作監を担当しているだけでなく、TVアニメとしてはスケジュールに余裕があったことも要因のようだ。原作から改変した設定が多くて脚本会議で7稿まで重ねることが通常だったらしいのに、第1巻ブックレットの脚本鼎談が収録された時点で最後まで脚本はほとんど完成していたという。これは英語や韓国語の音声が収録されているように、当時では珍しいくらい海外展開を重視していたためでもあるかもしれない。
ただ、スタジオぴえろで活躍していた小林常夫が監督であることや、絵コンテでの米たにヨシトモや黒津安明の参加、そしてドッペルゲンガーを意識した作品設定こそおぼえていたが、物語の細部はほとんど忘れていた。
第1話の小林コンテらしい実景を引用した暗い絵作りは見事。貼り込み素材をつかって牛乳パックなどを動かす描写も当時としては珍しい。オーディオコメンタリーによると主人公が立ち読みする雑誌は同じサンライズの別作品から素材を引いたとか*2。
第3話まで、ボクシング的な格闘戦で横からの構図で長回しする演出の多用が目を引く。けっこう複雑な殺陣を、2D格闘ゲームより少しカメラを近づけたかたちで見せる。
第13話、時間が飛んでの第二幕を黒津コンテで飾る。当時『NARUTO』で注目されたコンテマンだけに期待ほどではないという印象が残っていたが、記憶よりよくできている。コンテだけだが乱戦の多いエピソードを、引いたコンテと立体的な舞台で描写。きちんと格闘技らしい殺陣を組み立てていることにも感心。
一方で米たにコンテは、どれも限られたリソースで求められた派手な映像を作っているだけという印象が強い。実際、後半からは制作が苦しくなったところで、小林監督とは演出スタイルが異なる米たにコンテのおかげでリソースが節約できたらしく、美術担当のブックレットインタビューでも方向を気にしすぎなくてすむラフ指示に助けられたと語られている。1クール最後の第12話コンテや後半の複数エピソードの共同コンテを担当し、ヒロインと兄の因縁の決着*3となる第21話で単独コンテ演出を担当しているが、全体的にイベント回のわりには作画リソースが足りていない。特に第21話が、DR MOVIEグロス回なのはともかく、必殺技の映像使いまわしがかなり多い。
そして最終決戦と主人公とヒロインの別離が第22話で描かれ、その質自体は高かったのだが、最終回の第23話が総集編だったことには驚いた。どうにも最終回がしまらないというか釈然としない記憶が漠然と残っていたのだが……一応、新規作画を多めにして、主人公視点で謎めいた物語の導入の裏側でヒロインがどのような行動をとっていたのかという補完と、人間ではないヒロインとの一瞬の出会いをへた主人公の長い人生の結末まで描いていて、おちついて視聴すると後日談としては悪くないのだが。これが最終回ではなく放送終了の半年後くらいに放送する特別編だったなら高評価だった気がしないでもない。
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