法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ジョジョの奇妙な冒険』Adventure.7-正義-

霧につつまれた街で、空条承太郎たち一行はよみがえった死者の群れにかこまれていた。からくも逃げ出した一行だが、巨大な敵スタンドが姿をあらわす絶体絶命の危機に……


原作第三部の後半のみ映像化した1993年のOVAに対して、あらためて前半部を映像化するために2000年にリスタートしたOVAの最終巻。

クレジットは第4巻からの小林孝志監督に戻りつつ、担当したのは演出のみ。コンテは後に初監督作品『蟲師』が絶賛される長濱博史が手がけている。
原画も第1巻以来の増尾昭一に加えて、橋本晋治もクレジット。おそらく敵スタンドのメタモルフォーゼを担当しているのだろう*1


絵も話もOVAシリーズの最終巻となるだけの堂々たるしあがりで、これまで原作以上に存在感を増してきた美女エンヤに、ここまでに省略されたエピソードから意外な要素を追加。原作の前半の見どころを凝縮した敵として印象づけられた。
また、原作そのままの顛末で今後どう合流させるのかと疑問をもった第5巻のキャラクター*2に、鮮烈な復活劇を用意。原作での無駄にまわりくどい復活劇よりも整合性があったし、敵が画面全体を覆った時に吹き払う色彩変化で映像の爽快感を作りだしていた。
また、邪悪な母親といういかにもミソジニーを感じさせるエンヤをラスボスとするだけで終わらず、ちゃんと原作通りにエンヤをも使い捨てる真の邪悪たるDIOを印象づける結末もいい。エンヤの存在感が増しても全体のバランスが崩れず、それを踏み台とした敵がより強大に感じられる。


OVA全体の感想をいえば、残念ながら監督交代した第4巻と第5巻のテンポがいまいちで、絵作りも弱くなっていたのだが、最終決戦でもちなおしたといったところ。
それにしても第4巻と第5巻だけ原作からアレンジなく映像化していたことには、あらためて首をかしげる。たとえば第4巻の前半でポルナレフエボニーデビルの戦いを描き、その決着から連続してハングドマンへの戦いに移行すれば、もっと危機と脱出の密度が増したと思うのだが。共通する小道具が登場することだし。

*1:橋本晋治にしては平面的で膨張縮小が強調されたカットは、ちょっと大平晋也っぽいと感じた。

*2:『ジョジョの奇妙な冒険』Adventure.5-裁き- - 法華狼の日記