法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『フロム・ビヨンド』

屋根裏部屋で奇妙な装置を動かしていた助手は、異世界からクリーチャーを呼びだしてしまう。
そのクリーチャーに博士の頭部を食われ、精神病院へ入院した助手に、精神科医の女性が興味をもつが……


H・P・ラヴクラフトの短編小説『彼方から』を原作とした……というにはイメージが違いすぎるが、これはこれで楽しいスチュアート・ゴードン監督作品。1987年公開。

フロム・ビヨンド HDリマスター版 [Blu-ray]

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原作部分は冒頭だけ。とにかく全編がSEX!SFX!!という感じで、えんえんサービスシーンがつづく。特殊メイクと合成を活用してクリーチャーが現れては消えて、人間を快楽にひきずりこもうとする。
基本的にはグロテスクなモンスターがスローモーに襲ってくるだけだが、悪趣味な人体破壊が極まっていて楽しい。空中を泳ぐ深海魚や装置が作動している時だけあらわれる水などは雰囲気があるし、ミニチュア特撮の見せ場まであった。


よくよく物語だけを見ると、奇妙な装置を動かしては停止させるだけの単調な展開だが、少しずつ拡大していく被害と主人公の心身が変容していくさまで飽きさせない。86分という短めな尺も功を奏している。
精神病のあつかいなどで危ない橋をわたっているが、老若男女がまんべんなく物語で活躍して、あまり属性に対する偏見も描かれておらず、無駄な引っかかりがないがゆえの見やすさもある。
何より、バカバカしいとしかいいようがない内容でも、良い顔をした俳優陣が真面目に演じているので、醒めずに見ていられる。ジェフリー・コムズが演じる助手は整った顔で適度に気弱く、バーバラ・クランプトンは眼鏡の女医姿もボンデージ姿も対比的に似合っている。脇も『ゾンビ』のケン・フォーレが黒人警官としてひきしまった肉体を見せて活躍し、テッド・ソレルは欲望におぼれるマッドサイエンティストを怪演。