法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』

 ルパン一味はバミューダ海域の謎の島を目指す。これまで一味と戦った相手がその島の存在を示唆していた。しかし戦闘機で追跡してきた銭形と空中戦をくりひろげ、さらに島からの一発の銃弾で撃墜されてしまう。
 奇妙な風景の島に落ちたルパンたちは分断され、仮面をかぶった敵集団や、倒したはずの相手と戦う。それでも赤い川を流されながらルパンは敵の中心にたどりつく。そこには奇妙な体格をしたムオムという男がいた……


 2025年の長編アニメ映画。小池健監督と高橋悠也脚本で2014年からはじまった『LUPIN THE IIIRD』シリーズの完結編として作られた。公開から1年たち、プライムビデオで見放題になっている。

 制作したテレコムはブランドこそ継続しつつ、債務超過で会社としては公開直前に親会社のトムスに吸収合併された。もともと外国向けのクオリティが高いアニメを制作するため設立された会社で、宮崎駿や大塚康生に指導され、初元請け作品は『ルパン三世 カリオストロの城』。つまりアニメ映画の『ルパン三世』で始まり終わったわけだ。


 作品自体は、オムニバスとして描かれてきた各キャラクターのエピソード*1に、たったひとつの黒幕がいたという、連作短編ミステリのような趣向。
 この映画だけではわからない因縁が何度も出てきて、細かな回想で何度も物語が寸断されるので、あまり一本の完結した映画作品という感じがない。冒頭からOVAの回想と説明が多数あるので、この映画だけ視聴しても致命的な情報不足にはならないとは思うが……
 敵となるのはタイトルにもあるように、これまで『ルパン三世』シリーズの劇場版でくりかえされてきた、最新科学を反映した不死身の存在。もともとムオムが過去作の敵を思わせるデザインやネーミングだったところ、途中でその過去作の敵が黒幕と明確化されてドラマとしてはスケールダウンする。しかし最終的に明らかになる情景のスケール感はすばらしい。『ルパン三世』の初アニメ映画*2を重要な設定として引いただけはあるセンスオブワンダーがあった。
 また、この作品が事実上テレコムアニメーション最後の作品となったことで、最後に最初の敵に回帰する構造が結果的に強調された。これは良くも悪くもだが。


 映像作品としては今シリーズの延長で充実している。劇画調に描きこみつつ動きも良くて、序盤の空中戦作画から見どころたっぷり。近年ここまで手描き作画でメカアクションの魅力を出したカットは珍しい。本筋でくりかえされる格闘戦やカーアクションも良かったが、クライマックスの空母での共闘は頭ひとつ抜けて素晴らしかった。クレジットされたアニメーターの名前を見ると森久司の作画だろうか。
 ただしコンテが原因なのか、劇画調のタッチが静止した絵を目立たせてしまうのか、奥行きのある動きもあるわりには、奇妙に画面が平面的な作品だと感じられた。これもこの作品が映画らしさを感じさせない理由のひとつだ。しかし、無理やり生かされ操られ捨てられた者たちと戦っただけのドラマを、「フィクション」であるとルパンが宣言することで、平面的な映像が最終的に意味をもったようにも思えた。

*1:1作目の『次元大介の墓標』以外は感想をあげている。 『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』 - 法華狼の日記 『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』 - 法華狼の日記 『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』 - 法華狼の日記

*2:制作はトムスが東京ムービーという名前だったころのトムスで、絵として提示されたセンスオブワンダーからSF映画ベストテン投票企画の1位に私選したことがある。 SF映画ベストテン〜アニメ限定〜 - 法華狼の日記